2020年3月号掲載

スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM

Original Title :PEOPLE, POWER, AND PROFITS

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著者紹介

概要

万人を豊かにする“進歩的資本主義”を説いた書。著者は、ノーベル経済学賞受賞者で、世界銀行のチーフエコノミストを務めた経済学者だ。アダム・スミスの言う「見えざる手」が機能していない市場原理主義の現状を明らかにし、誰もが中流の暮らしをするために、政府がなすべきことを提言。正しい資本主義のあり方を示す。

要約

迷走する資本主義

 現在、米国などの先進国をはじめ、世界中に不満が蔓延している。

 過去四半世紀に米国を支配していた経済学や政治科学の考え方によれば、こんなふうにはならないはずだった。1989年にベルリンの壁が崩壊すると、民主主義と資本主義が勝利を収め、これからは経済がかつてないほどの速さで成長を遂げ、豊かさが全世界に広がるだろうと考えられた。

分断された世界

 だが、2008年の金融危機で、資本主義が完全ではないことが明らかになった。資本主義は効率的でもなければ、安定しているわけでもなかった。

 失敗しているのは経済だけではない。政治もそうだ。富や権力を持つ人たちが、その政治力を駆使して、自分たちに有利になるように政治や経済のルールを書き換えている。

 米国では、ごく少数のエリートが経済を支配している。ジェフ・ベゾス、ビル・ゲイツ、ウォーレン・バフェットの3人の資産の合計は、米国の所得階層の下位半分の資産の合計よりも多い。

市場はうまく機能していない

 過去40年にわたり、米国を支配してきた理論がある。経済は自由市場に任せておくのが一番いい、という理論だ。

 だが現実には、ごくわずかの企業が多大な権力を握り、ほとんど競争が行われていない。市場がうまく機能していないのは明らかだ。

 市場を適切に機能させるには、無数の条件を満たさねばならない。活発な競争が行われていること、情報が完全であること、個人や企業の行動が他に危害をもたらさないこと、などがそうだ。

 このような場合、政府が対策に乗り出せば、事態を改善できる。実際これまでも、不況時に政府が金融政策や財政政策を通じて経済を剌激し、失業を抑えてきた。

 アダム・スミスの言う「見えざる手」(自己の利益を追求していれば、結果的に社会の福利が向上するという考え方)は、近代経済学の最も重要な考え方だろう。

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