2022年9月号掲載
ダボスマン 世界経済をぶち壊した億万長者たち
Original Title :Davos Man (2022年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日2022年6月29日
- 定価2,420円
- ページ数485ページ
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著者紹介
概要
毎年、スイスで開催される「世界経済フォーラム総会」(通称ダボス会議)に集う、名だたる億万長者たち。“ダボスマン”と呼ばれる彼らは、これまで言葉巧みに嘘を浸透させ、減税や規制緩和を勝ち取ってきた。そんなダボスマンの論理や世界経済への影響などについて、ニューヨーク・タイムズ紙の記者が明らかにする。
要約
「ダボス会議」とは?
「ダボスマン」 ―― 。
この造語は、2004年に政治学者のサミュエル・ハンティントンが考案したものである。
この言葉が当初意味していたのは、「世界経済フォーラム年次総会」(通称、ダボス会議)に毎年出席するため、スイスのリゾート地、ダボスに出かける者たちのことだった。しかし歳月を経て、ダボスマンという言葉は、地球をまたにかける億万長者たちを束ねた呼び名として、ジャーナリストや学者たちが使うようになった。
ダボス会議の舞台裏
ダボス会議とは、形式上は、現代の様々な課題に取り組むための、数日間にわたるセミナーのことだ。そこでは、気候変動、ジェンダー間の不平等、デジタル化の将来などが真摯に討議される。
だが舞台裏は、ビジネス上の契約やネットワーク作りのための場と化している。ある経営者は、私に語った。
「これは地球上で最大のロビー活動の場なんだ。最も力のある人々が、外部への説明責任など負わずに閉ざされたドアの内側に集う。そしてその場で彼らが世界全体のルールを作る」
ダボス会議の成り立ち
ダボス会議の創設者はクラウス・シュワブだ。
シュワブはハーバードの大学院に留学した際、ステークホルダー理論の基礎を考えつき、これを、ビジネスと政府が人々のより良い生活を実現するための手段と位置付けた。
この発想に突き動かされたシュワブは、「ヨーロッパ経営フォーラム」と名付けて、研究者、経営者、政府当局者らの集いを1971年に主催した。舞台としてダボスを選んだのは、静寂な環境が意見を交わすのにふさわしかったからだ。
シュワブは言う。「美しい街で、参加者たちは善行や新しいアイデアについて情報交換し、世界が抱える社会経済的な問題、あるいは環境問題について互いに学ぶことができる」。
初回の参加者は450人だったが、年々その数は増え、フォーラム自体も拡大した。参加者の出身地域が多様化した実態を反映して、1987年から「世界経済フォーラム」と名乗るようになった。