2019年12月号掲載

人口減少社会のデザイン

経済・経済学社会・政治
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著者紹介

概要

膨大な政府の借金、格差拡大、社会的孤立の進行…。今の日本は「持続可能性」において危機的状況にある! こう指摘し、転換を図るための論点と提言を示す。「人口減少社会」から、持続可能な「定常型社会」へ。「農村型コミュニティ」から「都市型コミュニティ」へ。大きな視野から、人口が減少する日本社会のありようを考える。

要約

AIが示す日本社会の未来

 私たちの研究グループは2017年、AI(人工知能)を活用した日本社会の持続可能性と政策提言に関する研究成果を公表した。その内容は、約2万通りの将来シミュレーションに基づいている。

 研究の出発点にあったのは、現在の日本社会は「持続可能性」という点において“危機的”と言わざるをえない状況にあるという問題意識である。特に、次の点が重要である。

①財政あるいは世代間継承性における持続可能性

 日本政府の債務残高は1000兆円と、国際的に見ても際立って大きい。要するに、国民は医療や年金、福祉などの社会保障の「給付」は求めるが、それに必要なお金(=税や社会保険料)を払おうとせず、その結果、将来世代に膨大な借金をツケとして回しているのだ。これは、持続可能性という観点からも真っ先に注目すべき事実だろう。

 日本がこうしたことを続けてきた背景には、アベノミクスにも象徴されるように、「やがて景気が回復して経済が成長していくから、税収はやがて自ずと増え借金も減っていく」という、高度経済成長時代に染みついた発想を今も根強く引きずっている、ということがある。

②格差拡大と人口における持続可能性

 貧困層の割合の推移を見ると、1960年から高度成長期を通じて一貫して減っていったが、1995年を谷として生活保護を受ける人の割合は増加に転じ、その後も着実に増えていった。

 加えて、生活保護に至らずとも、生活が困窮していたり、あるいは非正規雇用を含めて雇用が不安定であったりする層が着実に増えている。

 また、日本では若者に対する社会保障その他の支援が国際的に見て極めて手薄であるため、特に若い世代の雇用や生活が不安定になっている。

 そしてそのことが未婚化・晩婚化の背景ともなり、それが出生率の低下につながり、人口減少をさらに加速させるという、悪循環が生まれている。

③コミュニティないし「つながり」に関する持続可能性

 ミシガン大学などが行った調査によると、日本は「社会的孤立度」が先進諸国の中で最も高い。社会的孤立とは、家族などの集団を超えたつながりがどのくらいあるかに関する度合いを指す。

 現在の日本社会の様々な問題の根底にあるのがこの点だ。現在の日本社会は「古い共同体(農村社会など)が崩れて、それに代わる新しいコミュニティができていない」という状況にあり、そのことが社会的孤立という点に現れている。

 社会保障というシステムは、介護にしても年金にしても、「(税や社会保険料を通じた)家族を超えた支え合い」の仕組みであるが、社会的孤立度が高いということは、家族以外の“他人”への無関心や、そうした他者との支え合いへの忌避感というものにつながる。それが結局、①の政府の借金の累積ということにつながっているのだ。

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