百歳人生を生きるヒント

人生論
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著者紹介

概要

日本人の平均寿命は延び、「百歳人生時代」が訪れた。「人生50年」は今は昔。かつての倍の時間をどう生きるか。作家・五木寛之氏が、人生後半の50年(50歳~100歳)の過ごし方を語った。長い下り坂を歩く準備をする50代の「事はじめ」、郷愁世界に遊ぶ90代の「妄想のすすめ」…。自らの体験から得た生き方を提言する。

要約

50代の事はじめ

 「人生50年」 ―― 。私たちは長い間、人の寿命はほぼ50年、それ以後は余生と考えてきた。

 しかし、21世紀の現在ではどうだろうか。50歳は働き盛り、70歳過ぎても現役という方が増えている。寿命は延び、「百歳人生」は目の前に迫ってきている。

 「人生100年」時代になれば、50歳になっても「あと50年ある」という人生行路が待っている。そこにあるのは、悠々自適の静かな老後ではなく、あとの50年をどう生きるかという、歴史が体験したことのない、未踏の世界なのだ。

 これまでのように、第一線からリタイアしたら、子供や孫に囲まれてのんびり余生を過ごすというシナリオは、もう成り立たないと考えた方がよい。

 この百歳人生という大きな課題を前に、50代から100歳への道のりを10年ごとに区切り、各10年をどのように歩くかを考えてみた。これまで85年間生きてきた私の、ささやかな体験から得たもの、下山の心構えを書き記したいと思う。

長い下り坂を歩く覚悟

 百歳人生を生き抜くための準備は、50歳前後から始めるのがよいのではないか。この年齢を、人生の折り返し地点と考えて、後半の道のりを歩く準備をするのである。

 人生を登山にたとえるならば、50歳までの人生は、頂上を目指して登る道である。そして50歳からの人生は、麓の登山口を目指して下りる、下山の道のりだ。その最初の10年に当たる。

 50歳まで生きられれば良し…と考えた「人生50年」時代に比べて、現在の50代は働き盛りといえる。だが、まだまだ上り坂のように見える坂も、確実に下りの傾斜になっていることを自覚しないといけない。50歳という折り返し地点に立って、まず、これから始まる後半の道のりは、下り坂であるという覚悟をもった方がよい。

 古くから「事はじめ」という言葉があるが、本来の意味は「大切なことを始める時」の事だそうだ。つまり百歳人生の、折り返し地点の50代を、老いの道を歩む事はじめの時、と捉える発想だ。

寄りかからない覚悟

 50代から始まる下り坂、そこを歩く心構えを教えてくれた1篇の詩がある。詩人・茨木のり子さんの「倚りかからず」という作品だ。

 「もはや できあいの思想には倚りかかりたくない もはや できあいの宗教には倚りかかりたくない もはや できあいの学問には倚りかかりたくない もはや いかなる権威にも倚りかかりたくはない ながく生きて 心底学んだのはそれぐらい じぶんの耳目 じぶんの二本足のみで立っていて なに不都合のことやある 倚りかかるとすれば それは 椅子の背もたれだけ」

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