ラ・ロシュフコー箴言集

Original Title :Réflexions ou Sentences et Maximes morales, 5e éd., 1678

人生論文化・思想・歴史
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著者紹介

概要

箴言、すなわち戒めとなる言葉の数々を収める。著者は、17世紀のフランスを生きたラ・ロシュフコー公爵。「我々の美徳は、ほとんどの場合、偽装した悪徳にすぎない」。有名なこの一句が示す通り、彼の言葉は、愛情や勇気といった美徳の下に潜む、自己愛・打算など人間の本性を浮き彫りにする。読者を刺激し、挑発する、フランス・モラリスト文学の傑作だ。

要約

箴言集

我々の美徳は、ほとんどの場合、

偽装した悪徳にすぎない。

  • ・我々が美徳と思い込んでいるものは、往々にして、様々な行為と様々な欲の寄せ集めにすぎない。それを運命とか人間の才覚とかがうまく按配してみせるのである。だから男が豪胆であったり、女が貞淑であったりするのは、必ずしも豪胆や貞淑のせいではないのである。
  • ・情熱は、しばしば最高の利口者を愚か者に変え、またしばしば最低の馬鹿を利口者にする。
  • ・情念は、往々にしてそれ自身と正反対の情念を産む。貪欲は時に浪費欲を、浪費欲は貪欲を産み出すし、人はしばしば弱さから強かになり、臆病から向こう見ずになる。
  • ・我々は皆、他人の不幸には十分耐えられるだけの強さを持っている。
  • ・欲は、あらゆる種類の言葉を話し、あらゆる種類の人物の役を演じ、無欲な人物まで演じてみせる。
  • ・小さなことに熱中しすぎる人は、概して大きなことができなくなるものだ。
  • ・人は、決して自分で思うほど幸福でも不幸でもない。
  • ・人は自分の偉大な功績を鼻にかけるが、その功績は偉大な志の賜物ではなく、偶然の結果であることが多い。
  • ・人間の幸不幸は、運命に左右されるとともに、それに劣らずその人の気質に左右される。
  • ・愛し合わなくなった時に、愛し合ったことを恥ずかしく思わない人は、めったにいない。
  • ・恋は燃える火と同じで、絶えずかき立てられていないと持続できない。だから希望を持ったり不安になったりすることがなくなると、たちまち恋は息絶えるのである。
  • ・本当の恋は幽霊と同じで、誰もがその話をするが見た人はほとんどいない。
  • ・沈黙は、自分自身を警戒する人にとって最良の安全策である。
  • ・我々は、しばしば自分より有力な人たちを愛していると思い込む。がしかし、その友情は利欲だけから出たものなのだ。我々が彼らに尽くすのは、彼らによいことをしたいからではなく、彼らからよくしてもらいたいためなのである。
  • ・知(エスプリ)は情(クール)にいつもしてやられる。
  • ・断じて媚は売らないと標榜するのも、一種の媚である。
  • ・若者は血気に逸って好みを変え、老人は惰性で好みを墨守する。
  • ・およそ忠告ほど人が気前よく与えるものはない。
  • ・女を愛せば愛すほど、憎むのと紙一重になる。
  • ・精神(エスプリ)の欠点は、顔の欠点と同じで、年をとるほどひどくなる。
  • ・よい結婚はあるが、楽しい結婚はない。
  • ・我々は、あまりにも他人の目に自分を偽装することに慣れきって、ついには自分自身にも自分を偽装するに至るのである。
  • ・我々が他人の美点を誉めそやすのは、その人の偉さに対する敬意よりも、むしろ自分自身の見識に対する得意からである。だから、他人に賛辞を呈しているように見える時でも、実は自分が賛辞を浴びたいと思っているのだ。
  • ・人は普通、誉められるためにしか誉めない。
  • ・同じ頭を使うなら、この先、身に降りかかるかもしれない不幸を案ずるのに使うより、現にわが身に降りかかっている不幸に耐えるために使う方がよい。
  • ・我々が新しい知り合いを好むわけは、旧知の人々に飽きたとか、目先を変えるのが楽しいからというよりも、むしろ、我々をあまりにもよく知っている人たちからは十分に誉めそやしてもらえない忌々しさと、彼らほどよく我々を知らない人なら、もっと誉めてくれるだろうという希望のせいなのである。
  • ・切れ者らしく見せようという色気が邪魔して、切れ者になれないことがよくある。
  • ・大部分の人は、羽振りや地位によってしか人間を判断しない。
  • ・武勇は、一兵卒にとっては、食うために就いた危険な職である。
  • ・それ自体、不可能なことはあまりない。ただ我々には、ぜひとも成し遂げようという熱意が、そのための手段以上に欠けているのである。
  • ・最高の才覚は、事物の価値をよく知るところにある。
  • ・大らかさと見えるものも、実は小利に目をくれずに大利を狙う、偽装した野心にすぎないことが多い。
  • ・愛の喜びは、愛することにある。そして人は、相手に抱かせる情熱によってよりも、自分の抱く情熱によって幸福になるのである。
  • ・気前のよさと呼ばれるものは、おおむね、与えてやるのだという虚栄心にすぎず、我々にはこの方が与える物よりも大切なのである。
  • ・憐れみとは、多くの場合、他人の不幸の中に我々自身の不幸を感じる気持ちである。それは、いつか自分が陥るかもしれない不幸に対する巧妙な備えである。
  • ・自分がしている悪のすべてを知り尽くすだけの知恵を持った人間はめったにいない。
  • ・いったん本当に愛が冷めてしまったら、二度とその人を愛することは不可能である。
  • ・気質には、頭脳よりも多くの欠陥がある。
  • ・人の偉さにも、果物と同じように旬がある。
  • ・我々に感嘆する人々を、我々は必ず愛する。そして、我々が感嘆する人々を、我々は必ずしも愛さない。
  • ・少しも尊敬していない人を愛すのは難しい。しかし、自分よりはるかに偉いと思う人を愛することも、それに劣らず難しい。
  • ・大多数の人の感謝は、もっと大きな恩恵を受けたいという密かな欲望にすぎない。
  • ・金に目もくれない人はかなりいるが、金の与え方を心得ている人はほとんどいない。
  • ・恋人同士が一緒にいて少しも飽きないのは、ずっと自分のことばかり話しているからである。
  • ・一体どうして我々は、自分に起こったことを細大漏らさず覚えているだけの記憶力を持ちながら、同じ人にその話を何遍したかを思い出すだけの記憶力がないのだろう?
  • ・我々が心の底を友達に見せることができないのは、普通、友達に対する警戒心よりも、むしろ自分自身に対する警戒心のせいである。
  • ・軽蔑すべき人間に限って、軽蔑されることを恐れる。
  • ・我々が小さな欠点を告白するのは、大きな欠点は無いと信じさせるためにすぎない。
  • ・我々は、自分と同じ意見の人以外は、ほとんど誰のことも良識のある人とは思わない。
  • ・我々は普通、自分を賛美してくれる人々しか心から誉めない。
  • ・自分の妻のことはめったに語るべきではない、ということなら、人はかなりよく知っている。しかし、自分自身についてはなおさら語るべきではない、ということを人はあまり知らない。
  • ・我々の涙には、他人を欺いた後でしばしば我々自身まで欺くのがある。
  • ・他人の虚栄心が鼻持ちならないのは、それが我々の虚栄心を傷つけるからである。
  • ・運も健康と同じように管理する必要がある。好調な時は十分に楽しみ、不調な時は気長に構え、そしてよくよくの場合でない限り、決して荒療治はしないことである。
  • ・愛する人に欺かれたままでいる方が、それに目を開かれるよりも不幸ではないことがある。
  • ・女は最初の恋人を長い間、確保しておく、二人目を作らない限り。
  • ・かつて美しく愛らしかった老婦人が陥る最も危険な滑稽さは、自分がもはやそうではないことを忘れてしまうことである。
  • ・恋の病は先に治る方がよく治ると決まっている。
  • ・我々は、実際に持っているのと正反対の欠点で自分に箔をつけようとする。気弱であれば、自分は頑固だと自慢するのである。
  • ・恋も老衰期に入ると、人生の老衰期と同じで、人はなおも苦しむために生きるだけで、もはや喜びのために生きることはない。
  • ・頭のいい馬鹿ほど、はた迷惑な馬鹿はいない。

 

考察

 先の『箴言集』の参考として、人に関する「考察」をいくつか紹介する。

交際について

 人間にとって、交際がどれほど必要かは言うまでもなかろう。

 すべての人がそれを欲し求める。しかし、それを楽しくし、また長続きさせる方法を講じる人はほとんどない。誰もが他人を犠牲にして、自分の楽しみや利益を見つけようとする。常に自分自身の方を大切にする。

 これこそ人と人との交際を乱し、決裂させるものなのだ。相手より自分を大事にしたい気持ちは自然で、これを棄て去ることは不可能だから、せめて隠す術ぐらいは心得るべきであろう。

 交際を楽しくするためには、各自が自由を保っていることが必要である。お互いに会うもよし、全く顔を合わさないのもよし、拘束なしに気晴らしや、さらには退屈さえも、共にするようでなければならない。

 時には煩わしい、と思われるような目に遭いたくなければ、お互いに相手なしでもいられるようにすべきである。そして、人は得てして少しも相手の邪魔にならないつもりでいる時に、邪魔になるのだ、と肝に銘じることだ。

恋と人生について

 恋は人生の縮図である。どちらも否応なしに同じ転変、同じ変化を辿る。

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