2017年10月号掲載

インバウンドの罠 脱「観光消費」の時代

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著者紹介

概要

「インバウンド」とは、外から中へ入り込むこと。一般に、外国人の訪日旅行を意味する。その数は年間2000万人超、2020年には4000万人になるとの予想も。大きな経済効果が期待されるが、問題も数多い。本書は、最多の中国人客に翻弄される、日本のインバウンドの現状を考察。経済効果一辺倒の「おもてなし」に警鐘を鳴らす。

要約

中国人客に翻弄されるインバウンド

 2017年1月、日本政府観光局(JNTO)は「2016年の訪日外客数は、統計開始以来過去最多の2403.9万人」と発表した。

 2020年の東京五輪を目前に、インバウンド・ツーリズムは盛り上がりを見せる気配だ。地方自治体、そして観光業、ホテル業などの関連業界は、これがもたらす経済効果に大きな期待を寄せる。

 中でも消費力のある中国人客は欠かすことのできない“上客”だ。しかし困ったことに、そこには常に「極端でアンバランスな現象」が伴う。

「爆買い」で離れていった日本人客

 由緒ある名店に丁寧な接客 ―― 銀座での買い物は日本人にとって一種のステイタスだが、「爆買い」が蔓延した頃、こんな失望の声も上がった。

 「あの店にはもう二度と行きません」

 店に中国人観光客が入ってくると、販売員はそちらを大切に扱い、日本人客の接客がおろそかになるからだ。こうした日本人客の不満の声は、銀座の店舗経営陣の耳にも数多く届いていた。

 また、「お土産定番品の酒やタバコならともかく、日常の生活用品まで8%の免税にする必要があるのか」と、「外国人旅行者向け消費税免税制度」に不公平感を訴える人もいる。

 日本政府は、東京五輪が開催される2020年に向けて“ショッピング大国”を目指す取り組みを進めている。それに先立ち、2014年10月から、外国人旅行者向けの消費税免税枠を食品や薬品、化粧品などの消耗品にまで適用させたのである。

今日のシンガポールは明日の東京

 他のアジアの国は、中国人客をどう受け止めているのか。

 観光立国として一日の長があるシンガポール。2004年、同国への渡航者は830万人だったが、2014年には1510万人に。10年で約1.8倍になった背景には、もちろん中国人観光客の存在がある。

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