2017年6月号掲載
決定版AI 人工知能
著者紹介
概要
著者は、AIの各種プロジェクトに従事する2人のスペシャリスト。AIは、新サービスの創造やビジネスの拡大に役立つという。ただし、AIを「何でも回答してくれる魔法のコンピューター」と捉えると、ビジネスでの成功は難しい、とも。本書では、AIへの誤解を解き、ビジネスに活用して成功するためのポイントを徹底解説する。
要約
AIがもたらす付加価値とは
皆さんは、AI(人工知能)にどのようなイメージをお持ちだろうか。質問すれば何でも回答してくれる、「人間と同等かそれ以上の知能」と捉えている人も多いのではないだろうか。
だが、AIをそう考えると、ビジネスでの成功は難しくなる。どちらかといえば、AIは「生活のあらゆる場所に溶け込み人間をサポートするもの」と考えるのがよいだろう。
ビジネスにおけるAIの活用には、大きく分けて4つの方向性がある。
①既存業務の効率化や高度化
1つ目は、今まで人が対応していた業務をAIで置き換えたり、もしくは人をAIでアシストしたりするパターンである。
AIで人をアシストすることを、IA(Intelligence Amplification:知能増幅)と呼ぶ。ビジネスにおけるIAのイメージは、「人がAIの支援を受けて生産性を向上させ、業務を効率化する」というものであり、IAの適用先には接客業務や審査業務などがある。
現在のAIは、人の発する言葉やその意味を正確に捉えることは苦手だが、膨大な情報を記憶したり、データに基づく客観的な判断をしたりすることは得意である。
②AIによる新規サービスの立ち上げ
2つ目はAIでデータ分析を行い、その結果を利用して新サービスを創造するパターンである。
例えば、冷蔵庫メーカーがセンサーとAIを活用して、ユーザーが購入した野菜や果物を正確に把握できるとしよう。
購入した商品を把握できれば、購買履歴をもとにレシピ情報を提供するサービスや栄養バランスについて助言するサービスを提供できる。栄養バランスが健康に直結することに気づけば、生命保険にまで進出できるかもしれない。
データを収集可能な立場にある企業が、AIを活用して、業界を超えた参入を行う例は今後増えていくと考えられる。
③ビジネスのスケール加速
3つ目は、AIによりビジネスを「スケール」(拡大)させるパターンだ。