2015年12月号掲載

CSV経営戦略 本業での高収益と、社会の課題を同時に解決する

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著者紹介

概要

「CSV」(共通価値の創造)は、ハーバード・ビジネススクールのマイケル・ポーター教授が、2011年に提唱した新しい経営モデル。本業で高収益を上げることと、社会課題の解決を同時に追求し実現しようというもので、従来の戦略論を根本から見直す試みである。このCSVの理論から実践に至るまでを、かつてポーター教授の指導を受けた著者が企業事例を交えて解説する。

要約

21世紀型経営モデルの出現

 世界中で、資本主義の有効性が改めて問われている。金融資本主義の暴走は、リーマンショックという形で世界経済の破綻を招いた。そして新興国の急激な成長を契機に、環境や資源の持続可能性が地球規模の課題として急浮上している。

 かつて才気あふれる若者は、一攫千金を夢見て起業家を目指した。しかし最近では、クールな若者ほど、NPOやNGOを通じた社会貢献を志す。まるで資本主義に対してレッドカードを突きつけるかのように。

 このような逆風の中で、資本主義の復権を目指す動きが米国で産声を上げた。ハーバード・ビジネススクールのマイケル・ポーター教授が、2011年に発表した論文がそのきっかけだ。

 “Creating Shared Value”(邦題「共通価値の戦略」)というその論文の中で、ポーター教授は、社会価値と経済価値の双方を追求することこそ、次世代の資本主義の目指すべき姿だと論じた。

 これまでの資本主義は、経済価値の創造のみを追求した結果、社会的な価値と乖離した利益至上主義を助長した。一方で、社会課題が膨らんでいく中で、NPOやNGOの活動だけでは、焼け石に水だ。

 社会課題を解くことによって新たな価値が創造され、それが経済的リターンを生む。そのような社会と経済の正の循環を作ることこそ、資本主義の本来の役割だとポーター教授は主張する。

 そして、単純な成長神話が崩れ、社会課題の解決が求められている今こそ、資本主義がこの本来の役割を果たすべき時だというのである。

「責任」から「戦略」への転換

 ポーター教授が説くCSV(共通価値の創造)。これは、「経済価値(Economic Value)」と「社会価値(Social Value)」を同時に追求して実現するものだ。

 CSRの限界はその言葉自体に端的に現れている。「社会的責任」という言葉には、本来の事業活動に付随して義務的に行うものという印象がある。受け身のイメージだ。

 このCSRという言葉の持つ限界にいち早く目をつけたのがポーター教授である。2006年の論文「競争優位のCSR戦略」では「戦略的CSR」という言葉を使い、自社の行う事業の中で社会的な課題に応える必要性を指摘していた。

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