じゅうぶん豊かで、貧しい社会 

Original Title :HOW MUCH IS ENOUGH?

経済・経済学社会・政治
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著者紹介

概要

副題「理念なき資本主義の末路」。かつてケインズは、資本主義の明るい未来を説いた。万人の生活水準は何倍も向上し、1日の労働時間は3時間になると。そして今。先進国は豊かな社会を実現したが、労働時間は減らず、所得格差は広がり、人々は競争に明け暮れている。こうした現状を憂えるケインズ研究の大家が、貪欲を煽る今の資本主義へなぜ至ったかを説く。

要約

ケインズの誤算

 本書は飽くなき欲望に警鐘を鳴らし、個人としても社会としても「もう十分」と言えない心理的傾向に対して強い懸念を表明するために書いた。

 本書の批判は、金銭的な貪欲、つまりとめどなくお金を欲しがる欲望に向けられている。

 金銭的貪欲を生んだのは資本主義であるから、資本主義を打倒すれば貪欲は消滅するとマルクス主義者は主張する。貪欲を生んだのは人間の原罪だとキリスト教徒は主張する。

 私たちの考えはこうだ。貪欲は人間の本性に根付いており、自分の財産を他人と比較してうらやましがる傾向を誰もが持つ。だが、この傾向は資本主義によって一段と強められた。このため、かつては金持ちに特有の異常な性癖だった貪欲が、今や当たり前の傾向になっている。

 資本主義は諸刃の剣だ。物質的条件の大幅な改善を可能にする一方で、人間の忌むべき悪癖、例えば強欲、嫉妬、羨望を助長する。この怪物は再び鎖に繋いだ方がよいと私たちは考える ―― 。

ケインズの予言

 1928年、ジョン・メイナード・ケインズはケンブリッジ大学の学部生を前に「孫の世代の経済的可能性」というテーマで講演を行った。

 学生たちが資本主義に幻滅し、ソ連を希望の光と見始めていることを彼は承知していた。この邪教から学生の心を引き戻すため、資本主義は万人がよい暮らしを送れるほどの富を実現する唯一効率的な手段だと説いた。

 その後、ケインズは資本蓄積と技術の進歩に関する過去のデータに着目し、資本財が年2%、技術的効率が年1%のペースで増え続ければ、「発展中の国では今から100年後には生活水準が現在の4~8倍に達する」と予言した。

 この主張の趣旨は、人類は物質的ニーズを現在の労働の数分の一で満たせるようになる、ということだった。多くても1日3時間働けば、「人間の欲求は満たせる」と言うのだ。

 ケインズがこう予言してから80年以上が過ぎた。ケインズの予言は当たったのだろうか。

 1人当たり所得は1930年からの70年間で4倍に増え、彼の予想(4~8倍)の下限に達した。

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