2014年1月号掲載

なぜ日本は若者に冷酷なのか そして下降移動社会が到来する

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著者紹介

概要

今、若者の経済的立場が弱くなっている。子どもの生活レベルが親世代より低下する「下降移動社会」が訪れつつある。こうした社会の変容に対する考察を軸に、ペットの家族化、児童虐待、ゆがんだ年金制度等、今日みられる諸問題に斬り込む。著者は、「パラサイト・シングル」「格差社会」などの言葉を世に浸透させたことで知られる、家族社会学者の山田昌弘氏。

要約

「下降移動社会」の恐怖

 1993年、アメリカのクリントン大統領(当時)は就任後の演説で、「今の子どもが大人になった時、自分の親よりも豊かでない生活を送る史上初めての世代になるだろう」と国民の危機感をあおり、経済成長戦略を説いた。

生活レベルが親世代より低下する

 しかし、それから約20年経った今、アメリカ経済は順調に成長している。その間、GDPが停滞し、大人よりも貧しい暮らしを強いられているのは、当時の日本の子どもたちの方となった。

 1人当たりGDPが停滞する中で、少子高齢化が起こり、年金という形で現役世代から高齢世代への所得移転が加速する。その結果、ここ20年の間、若者世代の所得水準は低下している。

 そして、今後確実に生じるのは、クリントンが憂慮した世代間の「下降移動」というべきものだ。

 世代間の下降移動とは、子どもが親と同じ年齢になった時、その社会経済的地位が、かつての親と比較して下降しているということである。

 経済の高度成長期には、子どもが親と同じ年になった時、親以上の生活レベルを享受できるのは当然と見なされた。経済全体が成長する中で、子どもは親よりも高い学歴を手に入れ、親よりもよい職に就くことができた。

 しかし、90年代になって、階層の閉鎖化、つまり、父親の職業と息子の職業の相関関係が強まり、よい職に就いている父親の息子でなければ、なかなかよい職に就けなくなった。

 そして、親の間に社会経済的地位の格差があれば、学歴を介して、子どもに引き継がれる傾向が強まっている。これを「階層の固定化」と呼ぶ。

危機感のなさが問題

 私の大学のゼミ生が、今社会人になっている中学の同級生にインタビュー調査を行った。その結果は、興味深いものであった。

 両親が高卒である者は、ほとんどが高卒で社会人となった。その点だけを見れば、ただ単に階層が再生産されているだけに見える。

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