2026.11.9

編集部:三ツ田

人間関係に役立つちょっとした技術――人生に余裕をもたらす“ユーモア”の魅力とは

人間関係に役立つちょっとした技術――人生に余裕をもたらす“ユーモア”の魅力とは

ユーモアは人類のもつ唯一の効果的な武器

 「人類がもっている唯一の効果的な武器、それは笑いだ」

 これは、ユーモアに富んだ作品を多く残した小説家マーク・トウェインの言葉とされています。この言葉を現代の視点から解釈すると、人類のもつ効果的な武器は、ドローンやミサイルなどではなく「笑い」だ、と受けとることもできるでしょうか。

 

 現在、世の中を見渡してみると、SNSなどには、怒りをむき出しにしたままの言葉が飛び交い、また、世間一般もなにかと不寛容な雰囲気に覆われているように感じます。

 そのようなギスギスとした空気が漂う昨今ですが、もしかするとその空気を和らげ、私たちに心の余裕や、他人への許しの感覚をもたらしてくれる「特効薬」があるかもしれません。

 それはつまり、「ユーモア」をもつことです。

 

 この前、夕食後に皿洗いをしながらラジオを聴いていると、イギリスの政治家ウィンストン・チャーチルの次のような言葉が紹介されていました。

 

 「この人物は、私が忌み嫌う美徳をすべて身につけ、私が敬愛する悪徳をひとつも持ち合わせていない」

 

 チャーチルは、政治的に敵対する人物に向けてこの言葉を述べたそうです。

 仕事などにおいて、人間関係で対立が生じるときは往々にしてあります。そんなとき、チャーチルのようにほんの少しユーモアをもつことができれば、どのような相手であれ円滑な人間関係を保つことができるのかもしれません。

 そこで今週は、様々な場面で使えるユーモアの技術を教えてくれる1冊、『ユーモアは最強の武器である スタンフォード大学ビジネススクール人気講義』(ジェニファー・アーカー、ナオミ・バグドナス 著/東洋経済新報社 刊)をPick Upします。

ユーモアの効用

 文学、芸術作品からSNSに流れてくる言論まで、しばしばユーモアが含まれます。ユーモアのある文面は、私たちを惹きつけます。

 それはまた、企業が手掛ける広告においても同様です。

 

 『ユーモアは最強の武器である』では、あるスキンケア製品を扱う会社がニューヨーク・タイムズ紙に出した広告の例を取り上げています。この広告は、会社のCEO自ら手掛けたそうです。

 

 広告では一番上に、

 「広告の専門家は、みんな長文の広告なんか読まないと言います。」

 と大きな字で見出しを表示、その下にとても細かな字で、実に長文の広告文を載せています。見出しと広告文の内容が矛盾するユーモアにより、広告はつい見入ってしまうものになっています。また、広告文では広告のつくり手の本心を、ユーモアを交えながら具体的に綴っています。

 

 実はこの広告は、リーマン・ショック後の2009年、最悪の不況のなか掲載されました。しかしそのような状況でもユーモアをもつことによって、この広告に込めたメッセージは多くの人に伝わったと先のCEOは語っています。

 

「経済が厳しい状況で、不安定な要素ばかりで疑念が広がっていました。(あの広告は)世の中に漂っていた緊張感を和らげたんです。とても素朴で素人っぽかったから親しみやすくて、本音として伝わったのでしょう。(中略)

世の中が不安なときほど、ユーモアにふれる機会は少なくなります。そんなときにユーモアにふれると、みんなもうすっ飛んでいくんです」

(『ユーモアは最強の武器である』214ページ)

 

 発信者の本心がウィットと温かさを備えることで、メッセージが深く伝わり、人と人をつなげる役割を果たす。これもユーモアの大切な効用のひとつといえるでしょう。

深刻さと隣り合うユーモア

 以前聴いたラジオのなかで、イギリスの魅力あるユーモアがもう1つ紹介されていました。調べてみると、このユーモアは少なくとも20世紀初頭から使われているようです。

 

 矢や槍などが背中に刺さって血を流し倒れ込む兵士に、同僚が近づき、動揺しながら「 "Does it hurt?"(大丈夫か?傷は痛む?)」と聞きます。

 倒れている兵士が答えます。「 “Only when I laugh.”(笑う時だけ)」。

 

 深刻さと笑いはときに隣り合います。ここには、瀕死の重傷を負っても、その深刻さを相手に一瞬忘れさせるユーモアがあります。

 ユーモアの奥には、その言葉を放つ人の精神性や人生観が表現されています。その人の本心や心の在り方が直に伝わるからこそ、私たちはユーモアに心惹かれるのかもしれません。

*

 『ユーモアは最強の武器である』では、日常で使える技術として、ユーモアを解説しています。

 長い人生、多かれ少なかれ人間関係で諍いが生じるときがあります。もしそのときにユーモアの感覚をもつことができれば、お互いが肩と肩をぶつけることなく、居心地の良い落としどころを見つけることができるのではないでしょうか。

 興味のある方は本書を手に取り、コミュニケーションの良き技術――ユーモアについて考えるきっかけとしてみてはいかがでしょうか。

(編集部・三ツ田)

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 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2024年12月号掲載

ユーモアは最強の武器である スタンフォード大学ビジネススクール人気講義

ユーモアが職場にもたらす効用は様々だ。知的に見えたり、メンバーの間に信頼感が生まれたり…。にもかかわらず、多くの職場でなされるのは無味乾燥な会話ばかり。なぜそうなるのか? 膨大な調査と科学研究からその原因を解明、仕事にユーモアを取り入れるヒントを示す。読み終えたら、同僚にジョークを言いたくなる1冊だ。

著 者:ジェニファー・アーカー、ナオミ・バグドナス 出版社:東洋経済新報社 発行日:2022年9月
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