2026.8.31

編集部:三ツ田

3つの「M9地震」が近い将来に発生する!? 地球科学者が鳴らす警鐘に耳を傾ける

3つの「M9地震」が近い将来に発生する!? 地球科学者が鳴らす警鐘に耳を傾ける

「大地変動の時代」に突入した日本

 2026年7月28日、熊本県で震度7を観測する地震が発生しました。被災地では連日気温が35℃を超え、電力や水道が寸断された状況下で熱中症対策が課題となっています。
 地震発生から1カ月が経過しましたが、被災地の報道に接する中で、今、自分が住んでいる地域でも将来地震が起きるのでは? と考えた方もおられるのではないでしょうか。

 そこで、今週は『M(マグニチュード)9地震に備えよ 南海トラフ・九州・北海道』(鎌田浩毅 著/PHP研究所 刊)をご紹介します。

 本書は、「京大人気No.1講義」で知られる地球科学者・鎌田浩毅氏が、日本列島で今後発生が懸念される巨大地震について、最新の知見をもとにわかりやすく解説した1冊です。

 本書によると、日本の地盤は平安時代以来、1000年ぶりの「大地変動の時代」に突入しているといいます。「大地変動の時代」が始まるきっかけとなったのは、2011年3月11日に発生した東日本大震災です。この大震災の発生によって日本の地盤は不安定となり、地球科学者の間では「不安定な地盤がさらなる災害原因となる」ことは間違いないとされているそうです。そしてこの地殻変動は地震や噴火を伴い、今後数十年というスパンで続くといいます。

 この「大地変動の時代」を踏まえ、鎌田氏は近い将来、東日本大震災と同規模のM9地震が3つ起こると警鐘を鳴らします。

南海トラフ巨大地震

 3つのM9地震のうちの1つが、南海トラフ巨大地震です。2025年9月の政府地震調査委員会の発表によると、南海トラフ巨大地震が今後30年のうちに発生する確率は、60%~90%(地震発生間隔と隆起量データを用いた計算方法)、または20%~50%(発生間隔のみを用いた計算方法)と試算されています。

 しかし、確率の話だけを聞いても、実際に自分の身に大きな災害が起きるのを想像することは、なかなか難しいのかもしれません。

 私は阪神淡路大震災(1995年)の翌年に大阪で生まれたため、しばらくは命の危険を感じるほどの大きな地震に遭うことはありませんでした。しかしその後、大学進学に伴い移り住んだ北海道で2018年に北海道胆振東部地震を経験しました。この大地震では発生直後にブラックアウト(大規模停電)も起こりました。

 今は再び関西で暮らしています。本来は南海トラフ巨大地震の影響が強く懸念される地域ですが、ここ最近は大きな地震が発生していないこともあり、地震の危険性をあまり意識しないまま日常生活を過ごしていました。しかし、今回の熊本地震に接し、改めて本書を読み返す中で、巨大地震発生への懸念が再び強まりました。

 さて、この本で鎌田氏は、6400人以上の犠牲者を出した阪神淡路大震災の直後、活断層の現地調査に出かけた時のエピソードを紹介しています。
 現地で調査を進める中で、鎌田氏は被災された住民の方々から思わぬ言葉を耳にしたそうです。
 「関西には大地震が来ないと思っていたのに」
 鎌田氏を含めた専門家は30年前から、関西にも大地震が来ることを伝えてきたはずでした。しかし、市民には全くと言っていいほど伝わっていない現実があり、住民の言葉に非常にショックを受けたと語っています。

 鎌田氏は研究者として、一般の方々に、地震が起きることを「伝え」ようとしますが、実際にはなかなか地震が起きることが「伝わらない」という課題があるといいます。
 そして、「伝わらない」原因の1つは、地震の予測が「確率」で表現されることだと指摘します。
 すなわち、確率で表現することは科学的ですが、地震が起きた時の具体的な状況をイメージしにくいものだと。
 そこで、鎌田氏は地震を「伝え」るために、次の2点に絞り、人々を啓発します。

 

必ず起きる南海トラフ巨大地震について、私が伝えたいのは以下の2項目だけである。すなわち、「南海トラフ巨大地震は約10年後に襲ってくる」「その災害規模は東日本大震災より10倍大きい」。

(『M(マグニチュード)9地震に備えよ 南海トラフ・九州・北海道』 123ページ)

 

 続けて鎌田氏は、地震に対する企業の備えの大切さを説き、企業は事業継続計画(リカバリー計画)を立案することが重要だと言います。事業継続計画とは、被災後になるべく早く仕事を再開するため、何をどういう順番で行うかを企業が事前にプランニングするものです。

 

南海トラフ巨大地震によって6800万人が被災すると、近隣地域から救助と援助に駆けつけられないという事態が生じる。すなわち、レスキューとサプライの両方が停止する恐れがある。「その1、約10年後。その2、東日本大震災の10倍の被害」と情報を2項目に簡素化すれば、企業も本気でリカバリー計画を立案する気になる。

(『M(マグニチュード)9地震に備えよ 南海トラフ・九州・北海道』 124ページ)


 こうした提言を読むと、市民である私たちや企業で危機管理を担う人たちが、近年の震災から真摯に学び、次に発生する可能性のある巨大地震に備えることの重大さが伝わってきます。

地震を想像し、備える

 ところで、鎌田氏は大学の講義の際、学生に次のように伝えるそうです。

 

これまで私は京都大学の講義で学生たちに「自分の年齢に10年を足してごらん」と言ってきた。20歳前後の彼らは30~40歳代で南海トラフ巨大地震に必ず遭遇する。多くが社会で中堅として働いており、家族や子どもがいるかもしれない。そういう中で日本の国家予算の数倍に当たる激甚災害が起き、半分近い人口が被災することを想像してもらうのである。

(『M(マグニチュード)9地震に備えよ 南海トラフ・九州・北海道』 126ページ)

 

 この言葉のとおり、10年後の自分の状況を想像してみることが、身の周りの備えに繋がるのかもしれません。そして、もし前述の2項目である、①約10年後、②東日本大震災の10倍の被害、という認識が広まり、人々が自発的に備えるようになれば、国が想定している被害の8割を減らすことができると鎌田氏はいいます。
 例えば、住宅の耐震化率を高めれば、倒壊による死者数を8割減らすことができるといいます。また、既存のビルを津波避難用に活用し、地震発生から10分以内に避難を開始すれば、津波による犠牲者を想定の2割まで減らせるそうです。
 鎌田氏は言います。

 

総人口の約半数(6800万人)が被災するような南海トラフ巨大地震では、一般市民の1人1人に自主的に行動してもらわなければ助からないのである。

(『M(マグニチュード)9地震に備えよ 南海トラフ・九州・北海道』 95ページ)

 

 なお本書では、警戒すべきM9クラスの地震が、南海トラフ巨大地震の他にもう2つ詳述されています。1つは九州・沖縄沖の琉球海溝地震。もう1つは、日本海溝・千島海溝地震です。どちらも最大高30mの大津波を引き起こす可能性があり、甚大な被害をもたらすことが予想されています。
 そうした予想がなされる中で、地震が発生した際の具体的な状況を想像し、身の周りの備えに繋げることが、自分自身を救い、また、他の人を助けることに繋がるのかもしれません。
 明日9月1日は、「防災の日」だそうです。
 防災の準備をしなければならないと思いつつもまだ進めていない方、巨大地震が起こると予想される地域に住んでいて地震が本当にやって来るのかいまひとつ腑に落ちないという方は、『M(マグニチュード)9地震に備えよ 南海トラフ・九州・北海道』を手に取り、地震について考え、備えるきっかけとしてみてはいかがでしょうか。

(編集部・三ツ田)

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2024年11月号掲載

M(マグニチュード)9地震に備えよ 南海トラフ・九州・北海道

地球科学者の著者は言う。「今後、東日本大震災と同じマグニチュード9の巨大地震が、3つ起こる可能性がある」。試算では、南海トラフ巨大地震の被災者は何と6800万人。本書では、巨大地震が発生するメカニズムや各地の被害規模、備えなどを、最新の研究をもとに説く。地震国に生きる上で、知っておきたいことが詰まった1冊。

著 者:鎌田浩毅 出版社:PHP研究所(PHP新書) 発行日:2024年8月
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