ゴールデンウィークが明け、いよいよ本格的に「年度が動き出す」時期となりました。
新年度の体制にも慣れた5月は、経営層や管理職にとって、計画を「描く」段階から「実行」に移す節目でもあります。ただ、トランプ関税や円高など、様々なリスクが待ち受ける中、「今の事業をどのように維持・発展すればよいか」「新たな挑戦はどう進めるべきか」といった悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
今週は、そうした悩みを解決する上で、参考になるビジネス書をPick Upします。
企業が中核事業を守りながら新たな事業を開拓・発展させる方法を、イノベーション研究の第一人者たちが説いた『両利きの経営 「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く』(チャールズ・A・オライリー、マイケル・L・タッシュマン 著/東洋経済新報社 刊)です。
変化の時代に問われる、“両利き”という視座
『両利きの経営』では、企業が成長を続けるには「2つの活動」が欠かせない、と説かれています。
それが、「深化」と「探索」です。
本書の監訳者である経営学者の入山章栄氏は、「解説」の中で次のように説明しています。
なるべく自身・自社の既存の認知の範囲を超えて、遠くに認知を広げていこうという行為が「探索」である。(中略)
一方、探索などを通じて試したことの中から、成功しそうなものを見極めて、それを深堀りし、磨き込んでいく活動が「深化」である。(『両利きの経営』6~7ページ)
「両利きの経営」とは、この「深化」と「探索」をバランスよく高い次元で行うことを指します。そして、両利きの経営が行えている企業ほど、イノベーションが起き、パフォーマンスが高くなる傾向がある、と入山氏は言います。
“二刀流”で未来を切り拓く
本書では、ネットフリックス、富士フイルム、アマゾンなど、多種多様な業界・企業事例を紹介しながら、「両利きの経営」を実践する際のポイントや、主要な経営理論・フレームワークなどを解説しています。
本書の特徴の1つが、成功事例だけでなく、失敗事例――ブロックバスター(ビデオ・DVDのレンタルチェーン店)や、コダックなど――も数多く紹介していることです。自社のことを思い浮かべながら、そうした事例を読み進めることで、変化に対応しなかった場合の代償を知ることができ、現状に甘んじることの戒めにもなるかと思います。
また著者らは、両利きの経営を実現する最大のカギは「リーダーシップにある」と語り、経営陣に対して次のようなアドバイスを送っています。
企業規模、成功、在職期間とは関係なく、企業の経営陣はこう問いかけてみる必要があると、私たちは主張したい。
市場と技術の変化によって的外れなことをやっている状況にならないために、どうすれば効率性の向上によって既存の資産と組織能力を「深化・有効活用(exploitation)」
しながら、十分に「探索・開拓(exploration)」するための準備ができるか、と。(『両利きの経営』52ページ)
“二刀流”のインパクトは、スポーツにとどまりません。ビジネスにおいても、変化の時代を切り開く上で大いに有効となり得るものです。
今年の経営を“深化”だけに任せていないか?
“探索”に必要な人材・資源・文化は備わっているか?
今年度の計画を実行に移す中で、組織のリーダーはこれらの問いを自らに投げかけ、イノベーションに挑戦してみてはいかがでしょうか。「両利きの経営」という視座を持つことが、変化の激しい時代をしなやかに、そして力強く生き抜く第一歩になるはずです。
(編集部・油屋)
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「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。
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