11月5日、2024年の「新語・流行語大賞」の候補となる30の言葉が発表されました(「2024年『新語・流行語大賞』30の候補 発表」/NHK NEWS WEB 2024年11月5日)。
今年は、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が1シーズンで達成した「50-50」(ホームラン50本、50盗塁の新記録)や、政治と金を巡る「裏金問題」などがノミネートされています。来週12月2日(月)には、この中から選ばれる「年間大賞」とトップテンが発表される予定です。
冬の風物詩となりつつある「新語・流行語大賞」。年間大賞の発表の様子は、多くのメディアで取り上げられることでしょう。企業でマーケティングや広報を担当する方からすれば、非常に羨ましい光景ではないでしょうか。イベントの報道を見て、「自社も多くのメディアに取り上げられたい!」「SNSで話題になりたい!」と感じる方も多いことでしょう。
そこで今週は、こうしたPR(パブリックリレーションズ)の仕掛け方についてわかりやすく解説した書籍、『共感PR 心をくすぐり世の中を動かす最強法則』(上岡正明 著/朝日新聞出版 刊)を取り上げます。
著者の上岡氏は、テレビ業界で10年間、「ズームイン!! SUPER」「めざましテレビ」といった人気番組の放送作家として活動した後、PR会社を立ち上げて200社以上の広報を支援してきた方です。
PRの原理原則
そもそも、PRとはどういう仕事なのでしょうか。
マーケティングの第一人者と呼ばれるフィリップ・コトラーは、次のように定義しています。
パブリック・リレーションズとは、好意的な評判を得たり、望ましい企業イメージを築いたり、好ましくないうわさ、記事、出来事を巧みに処理、あるいは回避したりすることによって、企業と企業を取り巻くさまざまな利害関係者との間に良好な関係を構築することである。
(『コトラー、アームストロング、恩藏のマーケティング原理』丸善出版 323ページ)
つまりPRとは、顧客やメディアなどと良好な関係を築くために、様々な施策を通じてコミュニケーションを図ることを指します。具体的には、ニュースに値する情報を作成して報道機関に提供する「報道対策」や、製品発表や取材対応を行う「パブリシティ」などです。「新語・流行語大賞」は、このパブリシティに該当します。
パブリシティは広告に比べ非常に低コストで、大衆に強い影響を与えることができ、掲載された媒体の信頼性を借りて高い効果を発揮します。例えば「新語・流行語大賞」の発表は、毎年多くのメディアに取り上げられていますが、広告を出して同じだけの露出をしようとした場合、おそらく数千万円~数億円はかかるのではないでしょうか。ちなみに、主催元の(株)ユーキャンと(株)自由国民社は例年、この効果を享受していると考えられます。
では、メディアに取り上げられるために、どのようにPRすべきなのでしょうか。
『共感PR』の著者である上岡氏によれば、商品やサービスのPRを行う上で、重要な原理原則があるといいます。
それが、誰かに話題にされない限り、絶対に商品やサービスは広まらないということ。
(『共感PR』 10ページ)
つまり、こちらが発信する情報は、受け手側が「面白い」「皆に教えたい」と思うものでなければならないということです。そして、そのためには、人にいかに「共感」してもらうかが重要なポイントだと上岡氏は述べています。
8×3の法則
では、自社の商品・サービスを、真に面白い情報、共感される情報に落とし込むにはどうすればよいのでしょうか?
上岡氏によれば、そのカギとなるのが「8×3の法則」です。
これは、次の8つの企業視点で自社の商品やサービスの強みを探り、それらの強みを3つの消費者視点で客観視し、消費者に受け入れられるか検証するというものです。
・「8」の企業視点①新規性 ②優位性 ③意外性 ④人間性 ⑤社会性 ⑥貢献的意義 ⑦季節性 ⑧地域性
・「3」の消費者視点
①社会 ②人(ターゲット) ③メディア
(『共感PR』 64ページ図版を参照)
企業視点の①「新規性」とは、文字通り、これまでになかったモノやサービスのこと。また②「優位性」とは、その商品やサービスにしかない付加価値のことです。
③「意外性」は、商品やサービスについて、「へぇ」と感心したり、「え?」と驚くインパクトがあったりすることです。本書では、レシートにカロリーを表示させたアスリート食堂、「機動戦士ガンダム」のロボットと豆腐がコラボした「ザクとうふ」などが紹介されています。いずれも意外性があり、消費者のインパクトを引く取り組みです。
こうした8つのポイントのうち、自社の商品・サービスがどこに該当するのか、またいくつ該当するのか検討することが重要だと、上岡氏は述べています。
消費者視点で検証する
上記8つの企業視点で商品やサービスの強みを洗い出したら、次は消費者視点に置き換えて確認・検証する作業に移ります。具体的には、次のようなことを行うのです。
1つは、社会が求めている情報か、2つ目はターゲットとなる人に本当にアピールできる情報か、そして、3つ目はメディアが取り上げたくなるような情報か。この3つの角度で見直してみるのです。
(『共感PR』 143ページ)
そして、3つの視点すべてにおいて、企業側の視点と消費者側の視点にズレがなければ、その情報は「求められている情報」、つまり「バズる」要素を持った情報だと上岡氏はいいます。
年末年始に何らかのPRを予定している方であれば、今一度、この「8×3の法則」で自社の商品・サービスを見直してみてはいかがでしょうか。もしかすると、これまで気づかなかった「バズる」要素が見つかるかもしれません。
また、マーケティングやPRに携わっていない方でも、話題になっている出来事を「8×3の法則」と照らし合わせて考えてみることで、今の社会の特徴や変化などについて見えてくるものがあるかもしれません。その意味で本書は、マーケティング・PRに携わっていない方にも、ぜひ一度手に取っていただきたい1冊です。
(編集部・油屋)
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