2026年9月号掲載
ブリリアント・ジャーク 静かにチームを壊す人たち
著者紹介
概要
「仕事はできるが、一緒に働きたくない」。そんな人が職場にいないだろうか。「優秀(Brilliant)」だが、チームの和を乱す「嫌な人(Jerk)」 ―― 「ブリリアント・ジャーク」と呼ばれる人たちだ。本書は、こうした人物が生まれる原因は、個人の資質というより、組織にあると指摘。職場の問題点を挙げ、組織を救う処方箋を提示する。
要約
あなたの隣にいる優秀で困った人
ブリリアント・ジャーク ―― 。
これは、「仕事の能力は高く優秀(Brilliant)だが、協調性がなく周囲に悪影響を及ぼす嫌な人(Jerk)」を指す言葉である。
エースの仮面を被った破壊者たち
例えば、営業部エースのA氏。彼は驚くような営業成績を叩き出すが、自分の意見が通らないと露骨に不機嫌になる。卓越した技術を持つエンジニアのB氏は難しいトラブルを解決する一方、他人を見下し、後輩には冷たく接する。
彼らは確かに仕事ができる。会社に利益をもたらし、難題を解決する。その意味で、彼らは間違いなく「優秀」だ。しかし同時に、組織の協調性を無視して周囲の人々を疲弊させ、メンタル不調者や離職者を生み出す元凶ともなっている。
「仕事はできるが一緒に働きたくない」「なぜ会社はあんな人を野放しにしているのか」。そんな嘆きの声が今日もどこかのオフィスから聞こえる。
なぜ、彼らは許されてしまうのか
なぜ私たちは彼らの有害な振る舞いを「仕方がない」と受け入れてしまうのか。そこには「特異性信頼」という心理的なメカニズムが働いている。
特異性信頼とは、集団に対する貢献で貯まるポイントのようなものだ。人は集団の目標達成に貢献したり、期待に応える行動をとったりするたびに「周囲からの信頼」というポイントを獲得する。ポイントが貯まると、集団の規範から少し外れた行動をとっても、「あの人はこれまで貢献してきたから」と大目に見てもらえるようになる。
本来、特異性信頼はリーダーが新しい提案をしたり、変革を起こしたりする際に使われるべきものだ。「普段は堅実な彼が言うのだから、この突飛なアイデアも試してみよう」というふうに。
だが、ブリリアント・ジャークは信頼のポイントを真逆の目的で悪用する。彼らは圧倒的な成果を出すことで大量のポイントを稼ぐ。そしてポイントを自分の地位を守るための保身や、ハラスメントの免罪符として浪費してしまうのだ。
「私はこれだけ会社に金を稼がせているんだ。部下にキツく当たっても文句はないだろう」
彼らは無意識のうちに、この交換取引を行う。周囲も無意識のうちにそれを受け入れてしまう。