2026年7月号掲載
世界のビジネスエリートが身につける教養 文化人類学
著者紹介
概要
グーグル、マイクロソフト…。近年、名だたるグローバル企業が「文化人類学」の知見を経営戦略に取り入れている。この学問の何が注目されているのか。本書は、約150年におよぶ文化人類学の歴史を紐解くとともに、「機能主義」「構造主義」といった理論がビジネスの現場でどう役立つのかを、興味深いトピックを挙げて解説する。
要約
なぜ「文化人類学」を学ぶのか
今、世界のビジネスエリートたちがこぞって学んでいる教養がある。それは「文化人類学」だ。
文化人類学の本質
文化人類学はビジネスにどう役立つのか? その効能は、主に2つに整理することができる。
①「遠くのもの」を「近くのもの」にする
第1に、地球の裏側に住む人々や異なる価値観を持つ人々など、物理的にも心理的にも「遠く」にいる存在を身近なものとして理解することだ。
19世紀の終わり頃、ヨーロッパの人々は、自分たち以外の民族の奇妙な儀礼や行動を見て、「非合理的だ」「野蛮だ」と切り捨てていた。
そうした遠くにある理解不能な異文化を、異質な存在として切り捨てるのではなく、深く知ることで理解したり共感したりできるようにする。これが文化人類学の第1の役割といえる。
②「近くのもの」を「遠くのもの」にする
第2に、自分たちが「当たり前」だと思っている日常や常識を、異文化を見るかのように距離を置いて眺め直す(相対化する)ことである。
日本社会の通念の中に浸かっていると、それが特殊な環境であることになかなか気づけない。しかし、文化人類学を通じて異文化を学ぶと、自分たちの「当たり前」が揺さぶられる。
例えば、「労働を美徳としない社会がある」といった事例を知ると、「なぜ毎日あくせく働くことが美徳なのか?」という疑問が湧いてくる。
身近にある常識を客観視することで、「思考の枠を外す」ことができる。そしてこれこそが、リベラルアーツとしての文化人類学の真骨頂である。
*
文化人類学は150年以上の歴史の中で、「理解不能な他者」を理解するための様々な方法を開発してきた。それらは「思考のフレームワーク」「世界を見るためのレンズ」と呼べるものである。