2026年6月号掲載

おどろきの刑事司法 〝犯罪者〟の作り方

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著者紹介

概要

多くの犯罪を見逃す一方、無辜の民を犯罪者に仕立て上げる ―― 。冤罪で長期間にわたり勾留された著者は、刑事裁判の現実をこう表現する。「人質司法」により否認・黙秘する被疑者を拘束し続ける検察、彼らの言い分を鵜呑みにして保釈を認めない裁判所…。人権を軽視する日本の刑事司法、その驚くべき実態に迫った書である。

要約

突然“犯罪者”にされた

 「郵便不正事件」 ―― 。2009年6月、私は冤罪により大阪地検特捜部に逮捕された。

 郵便不正事件は、「凛の会」という偽の障害者団体が、心身障害者向け定期刊行物の郵便料金割引制度を悪用して営利目的のダイレクトメールを多数発送し、通常郵便料金との差額を不正に免れたことに始まる。

 凛の会は、この制度の適用を受けるために必要な厚生労働省発行の証明書を日本郵政公社に提出していた。そしてこの証明書の発行の決裁権を持っていたのが、04年当時、厚労省社会・援護局障害保健福祉部企画課長を務めていた私だった。

 大阪地検特捜部は、私が凛の会を偽の障害者支援組織だと知っていながら証明書の発行に便宜を図ったと決めつけ、起訴した。裁判における検察官の主張は、次のようなものである。

 ―― 凛の会の幹部らは、郵便料金割引制度の適用を受けるため、04年2月、国会議員の石井一に厚労省への口利きを依頼した。石井は厚労省障害保健福祉部部長のAに証明書の発行を依頼し、Aは部下である村木厚子課長に便宜を図るよう指示した。村木は、部下のB係長に偽の証明書を作成するよう指示。偽造された証明書は、厚労省内で村木が凛の会側に手渡した ―― 。

 いかにもありそうな話だが、これらは巧妙に作られたフィクションである。公判では、凛の会が郵便料金割引制度を悪用していたこと、B係長が単独で偽証明書を作ったこと以外は、すべて事実に反する“検察官ストーリー”だったことが明らかになった。検察官による強引な見込み捜査、証拠の改竄なども露見し、検察への信頼を覆す不祥事として社会問題となった。

 この冤罪で私は5カ月以上も拘置所に勾留され、約1年2カ月にわたる裁判を闘うことを強いられた。幸い、無罪判決を得て、検察が控訴を断念したため無罪が確定したが、家族には大変な負担をかけた。父は心配のあまり胃潰瘍を患い、母は心労の末、無罪判決から1年もたたずに亡くなった。

 

罪を認めよ! さもなくばすべてを奪う

 戦いにおいて、取調官の最大の武器は「人質司法」だ。彼らは、被疑者・被告人が容疑の否認や黙秘をすると、長期間にわたって身柄を拘束する。

勾留期間の延長は“当たり前”

 刑事訴訟法では、検察官が被疑者を拘禁する必要があると判断した場合、逮捕から72時間以内に裁判官に勾留を請求することとされている。

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