2025年12月号掲載

トランプの貿易戦争はなぜ失敗するのか それでも保護主義は常態化する

Original Title :THE GREAT TRADE HACK (2025年刊)

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著者紹介

概要

2025年4月、トランプ大統領が発表した関税措置。その狙いは、関税によってアメリカの中間層を苦境から救い、国内産業を復興し、貿易赤字を解消する、というものだ。しかし、どれも不可能、関税にそんな力はない。こう語る国際経済学の権威が、同大統領が仕掛けた貿易戦争の問題点、アメリカが今なすべきことを明らかにする。

要約

関税は中間層の助けにはならない

 2025年4月2日、トランプ大統領が広範囲、かつ極端で厳しい関税措置を発表した。背景にあるのは、従来の通商政策の考え方ではない。それよりもずっと根深いもの、次のような「不満」だ。

 ―― 信頼を重んじるアメリカはルールに従ったが、国外のグローバリストに食いものにされ、屈辱を受けた。中間層がその代償を支払っている。

 トランプによる貿易戦争は、不満を関税という形で解き放ったものだ。だが、関税ではアメリカの中間層を立て直すことはできず、国内産業の復興も、貿易赤字の解消もできない。

 これは予想ではない。事実、不可能なのだ。

 アメリカの貿易政策の中核には矛盾がある。トランプは関税を中間層の苦境に対する特効薬だとしているが、関税にそんな力はない。中間層の大部分に、関税の効果が波及することはないからだ。

中間層の仕事の大部分はサービス生産部門

 実のところ、アメリカの中間層は工場労働者ではない。2022年の調査によれば、中間層の就業者の大多数はサービス生産部門に集中している。中間層の就業者数が最も多い産業セクターは医療・福祉で、全体の18.5%である。

 次に多いのが専門サービス(15.3%)で、エンジニア、コンサルタントなどだ。その後、小売業、教育、娯楽・宿泊業と続く。この5つのセクターだけで、中間層の雇用の約3分の2を占める。

 関税が国内産業を保護するために完璧に設計されていたとしても、支援が及ぶのは中間層労働者の10人に1人でしかない。他の9人は、関税による物価上昇で購買力が低下するだけだ。

 総じて、関税は中間層を苦しめることになる。

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