2025年10月号掲載

全社デジタル戦略 失敗の本質

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概要

なぜ、日本企業はIT投資で失敗するのか? ボストン コンサルティング グループがその原因を探るとともに、システム開発で失敗しないための方策を説いた。目的と手段をはき違えない、あるべき姿(To Be)を描く、開発会社の仕事を評価する基準を持つ…。開発の各フェーズで押さえるべきポイントが示された、実践的な1冊だ。

要約

なぜIT投資で失敗するのか

 IT・デジタル投資で、日本における様々な業界の様々な企業が取り組みに失敗している。

 日本企業がなぜIT投資に失敗するのか、現状やその原因を様々な観点から紐解いていくと ――

“守り”のために事業側企業のIT投資の増加が続く

 近年、日本企業のIT投資額は右肩上がりを続けている。2023年のある調査では、約5割の企業が「IT予算が増加している」と回答している。

 IT予算の増加は、企業が生産性の向上に向け、戦略的かつ前向きに投資していると解釈することもできそうだ。しかし、多くはそうではない。

 1つは、多くの日本企業が基幹システムとして導入しているERP(統合基幹業務システム)の販売・保守終了の事情だ。例えば、SAP ERPは2030年末の延長保守終了が予定されている。また、シェアの高い富士通のメインフレームも30年度末に販売終了となる。そのため、多くの企業が急ピッチで基盤更新に取り組まざるを得ない状況だ。

 実際、前述の調査でも、IT予算増加の理由は基幹システムの刷新などが多い。つまり、本来は業務効率化や生産性向上を促し、ビジネス効果を出していかねばならないはずの「攻め」のIT投資が実現できていない。「守り」のIT投資がメインである企業が半数以上を占めるということだ。

レガシーシステムからの脱却が遅れた理由

 日本では、いまだにレガシーシステムに依存する企業が少なくない。では、なぜ日本はレガシーシステムからの脱却が遅れたのか。それは、ERP導入が欧米ほどスムーズに進まなかったからだ。

 ERPとは、各社で行われる基幹業務を「標準的な業務」として定義・実装したパッケージシステム、いわば既製服である。各社の要件に合わせてシステムを作るのではなく、各社の業務をシステムが想定している標準業務に合わせるのである。

 だが、日本企業の多くはERPをパッケージシステムのまま導入せず、自社の業務プロセスに合わせて大規模なカスタマイズやアドオン(追加ソフト)開発を進めた。この結果、開発費が膨張しプロジェクトの失敗が相次いだ。また、完成にこぎつけたシステムもバージョンアップ対応などパッケージシステムの利点を享受しづらくなった。

 こうしたERP導入の困難さから、メインフレームを維持する企業も多い。そしてメインフレーム上の基幹システムやアドオン満載のERPは、更新の難しいレガシーシステムとして残り続けている。

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