2025年10月号掲載

緊縮資本主義 経済学者はいかにして緊縮財政を発明し、ファシズムへの道を開いたのか

Original Title :THE CAPITAL ORDER:How Economists Invented Austerity and Paved the Way to Fascism (2022年刊)

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著者紹介

概要

医療費削減、民営化、賃金引き締め…。歴史的に繰り返されてきた、様々な緊縮政策。その目的は、常に“財政健全化”とされてきた。しかし、真の狙いは「資本主義体制の維持」であり、単なる経済政策ではなかった! 第1次大戦後に端を発し、今日まで続く「富裕層への富の集中」と「労働者階級の抑圧」を、気鋭の経済史家が暴く。

要約

資本主義と第1次世界大戦

 2020年3月、COVID-19パンデミックの初期、ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモは、病院への医療支出を4億ドル削減する計画を発表した。パンデミックを前にしながら、最貧層向け治療費支払い引き締めを公言したのだ。

 「ない袖は振れない」とクオモは肩をすくめた。

緊縮策は資本主義体制の命綱

 財源不足に直面した政府が引き締めに踏み切る時、まず国民サービスを狙い撃ちするのは、20~21世紀の1つのパターンである。

 政治学者マーク・ブライスは、緊縮策が歴史上、目標(債務削減や経済成長促進等)の実現の観点から必ずしもうまくいってこなかったのに、政府によって採用され続けてきたと言う。ブライスは、このパターンを「狂気の一形態」と呼ぶ。

 しかし、経済危機(生産高縮小やインフレ昂進等)のみならず、資本主義の危機への応答として緊縮策を見るならば、その狂気の裏に隠れた一定の道筋のようなものが見えてくる。

 緊縮策は、資本主義体制防衛の命綱なのだ。

資本蓄積の2大支柱

 資本主義とはただの経済制度ではない。それは社会秩序に関わる制度にほかならない。

 資本主義において、資本の蓄積は次の2大支柱に依存している。第1に、小集団または個人が生産手段を私有すること、第2に、賃金労働者の雇用を富の蓄積の策に用いることである。

 資本主義制度は、18世紀半ばまでには「自然」と見まがうまでに洗練された。

瓦解する2大支柱

 この資本主義制度を塗り替えたのが、第1次世界大戦である。市場の自己調整能力は、戦時の前例なき生産の要求において全くうまく働いてくれないことが判明した。

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