2025年9月号掲載
新しいリベラル ――大規模調査から見えてきた「隠れた多数派」
- 著者
- 出版社
- 発行日2025年6月10日
- 定価1,320円
- ページ数350ページ
※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。
※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。
著者紹介
概要
これまで「リベラル」は、外交・安全保障や憲法改正などを巡り、「保守」と対立してきた。だが今、重視する論点が変わりつつある。人々の成長、次世代への支援を望んでいるのだ。従来型ではない、「新しいリベラル」。社会で多数を占めるにもかかわらず、見落とされてきたこの層の実像を、大規模な社会調査から明らかにする。
要約
衰退しつつあるリベラル?
現代の日本政治において、いわゆるリベラル派の衰退は著しい。
人々からの支持を失ったリベラル?
2012年に第2次安倍内閣が成立すると、保守政党といわれる自民党はその後、12年以上も政権を担当しつづけている。これに対してリベラルとされる諸政党は、あまり支持されなくなってきた。
例えば、2007年の参議院選挙から2010年の参議院選挙にかけて、民主党の得票率は自民党を上回っていた。だが、2012年の衆議院選挙で、民主党の得票率は16%まで低下。2022年参議院選挙では、立憲民主党の得票率は12.8%となった。
一方、自民党の得票率は、2012年衆議院選挙では27.6%と3割を切ったものの、2022年参議院選挙まではおおよそ35%付近で推移している。
人々は反リベラル化したのか?
この状況は、人々の価値観が、もはやリベラルではなくなったことを意味するのだろうか。
答えは「ノー」。全国レベルの社会調査の結果によると、2000年代から2010年代にかけて、ジェンダー平等、新自由主義、ナショナリズムについての人々の意識は、大きくは変化していない。
例えば、ある研究によると、性別役割分業に賛成する人の割合は1970年代以降、一貫して低下しつづけている。また、外国人一般への排外意識は、2010年代になると、より寛容なものになっている。「所得の格差を縮めるのは、政府の責任である」という意見に賛成する人の割合は1999年以降、約5割でほとんど変化していない。
つまり、政党政治や社会運動にみられるリベラルな勢力の低調は、国民レベルでリベラルが退潮したことを示すものではない。現実に起きているのは、そのような価値観をもつ人たちにとって、従来のリベラルな政治勢力が提供する政治的選択肢が魅力的なものでなくなったということである。
その背景として考えられるのが、従来のリベラルな政治勢力とは異なるものを要求するリベラル、すなわち、「新しいリベラル」の出現である。
「保守vsリベラル」はどこまで有効か?
これまで、政治の世界では「保守vsリベラル」という対立図式がよく用いられてきた。