2025年7月号掲載
なぜ日本のメディアはジャニーズ問題を報じられなかったのか 記者クラブという病理
- 著者
- 出版社
- 発行日2025年4月15日
- 定価1,100円
- ページ数223ページ
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著者紹介
概要
世間を騒がせた、ジャニー喜多川氏による性加害問題。情報を掴んでいたにもかかわらず、日本の新聞社やテレビ局は、長年沈黙していた。記者クラブという「ぬるま湯」につかり、海外メディアからの「外圧」がなければ動かない…。その存在意義すら忘れつつある日本の大手メディアの問題点を、元新聞記者が鋭く指摘する。
要約
ジャニーズ問題と「メディアの沈黙」
ジャニーズ問題 ―― ジャニー喜多川氏の性加害問題は約20年前から一部週刊誌の報道があり、メディア界で知られていた。だが、本気で取材する主流メディアはなかった。その沈黙が破られたのは、英国の公共放送BBCが報道してからだ。
報道されなかった人権侵害事件
なぜ、日本のメディアは沈黙していたのか?
2023年、TBSは、ジャニーズ性被害を報道しなかった背景について内部調査を行い、「男性の性被害に対する意識が低く、芸能ダネと位置づけてしまったことが反省点」などと弁明している。
しかし他局も同様だが、TBSはジャニーズのタレントから膨大な視聴率を得、莫大なCM広告料を稼いできたのではないか。そのTBSが「芸能ネタ」と軽視していたというのは筋が通らない。
この問題は、国連人権理事会が警告したように、重大な人権侵害事件だ。もし、記者が何らかの情報を掴んでいたなら、行動を起こすべきだった。
BBCは「(日本には)礼儀や場を乱さないのを重要視する社会があり、声を上げない要因につながっている」と指摘、記者も「自己検閲したことで口をつぐんでしまったのではないか」と語った。
テレビ朝日検証委員会の調査でも、「(有名タレント起用への)忖度の空気が醸成されていた」との証言がある。安倍政権時代の政治圧力に対する「メディア側の忖度」が問題化して久しいが、芸能界の闇の構造にも忖度は広がっていて、これが報道されない理由と考えると、そら恐ろしい。
クロスオーナーシップの弊害
日本のマスメディア業界には、大新聞社が民放キーテレビ局の親会社となる「クロスオーナーシップ」(相互所有)という仕組みがある。例えば、朝日新聞→テレビ朝日、毎日新聞→TBSなど、ニュースメディアが系列化している。
このため大新聞社の記者が仮に事件を知っていたとしても、自社系列のテレビ局が気にしているジャニーズの性被害問題を、新聞が率先して報道することはタブー視されていた。
報道の自由度ランキング70位の衝撃
国際NGOの国境なき記者団が毎年公表する「報道の自由度ランキング」。日本の2024年の順位は180カ国中70位で、G7の中のダントツ最低国だ。なぜ、日本のランクはこうも低いのか?