2023年6月号掲載

キーエンス 高付加価値経営の論理

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著者紹介

概要

営業利益は実に4000億円。時価総額13兆円で、国内の全上場企業のトップ5に位置するキーエンス。自動制御機器や計測機器などを販売・製造するこの企業は、いかにして高業績を実現し続けているのか。キーエンス協力の下、経営学者が調査・取材を行い、同社が取り組む高付加価値経営、イノベーションの仕組みを解析する。

要約

キーエンスの高付加価値経営

 キーエンスは、滝崎武光が1972年に兵庫県伊丹市にリード電機として創業した生産財企業だ。86年には、キーエンスに社名を変更。90年に東京・大阪証券取引所市場第1部に上場した。

 上場以降、30年間以上、突出した業績と成長を続けている。特に、売上高営業利益率は驚異的だ。2000年度からの22年間、売上高営業利益率が40%を下回ったことはない。2023年1月時点で時価総額は13兆円を超え、国内ではトヨタ自動車などとともにトップ5に位置する。

目標としての「付加価値最大化」

 「新しい価値を創出する」という意味でのイノベーションによって、社会は繁栄する。この考え方を背景にして、キーエンスは創業以来、「付加価値の最大化」を目標として掲げてきた。

 付加価値とは、企業が購入した原材料等に新たに付加された価値であり、簡易化すると売上(総生産額)から原材料費等を引いた差分だ。つまり、付加価値額を最大化するには、売価と原材料費の差分(総利益・粗利)を最大化する必要がある。

 しかし、付加価値という言葉は、日常通俗的には少し異なったニュアンスで使われる場合もある。

 例えば、多くの企業で聞かれる「次の商品は独自の付加価値を付けたい」では、何か付加的・追加的なものを上乗せして、販売価格を高めることを意味する。この場合、機能や装備を追加するので、原材料費と売上(価格)の両方が大きくなり、それらの差分だけに注目しているわけではない。

 キーエンスが目指す付加価値は、元来の意味での付加価値であり、加えて、その売上に対する比率を重視する。付加価値の最大化を重視するために、顧客の課題や潜在ニーズを見極めたうえで、顧客価値が比較的低い装備や機能を商品仕様から削除する事例も少なくない。

イノベーションの指標 ―― 売上総利益

 キーエンスは、売上高に占める総利益・粗利(≒付加価値)の割合を8割程度と想定し、30年間にわたり、そのレベルをほぼ実現してきた。同社と同様に生産財をメインとするNECや三菱電機などの売上高総利益率は30%にも届かない。

高付加価値の論理

 ここで最も重要なのは、総利益率が80%以上と大きいのは、キーエンスのおかげで顧客企業も同時に大きく利益を高めているという点だ。

 企業が高い対価を支払うのは、経済的価値が高く、高価でも費用対効果が大きい場合である。つまり、顧客企業がキーエンスの商品によって実現できる利益増加(生産性向上、コスト削減など)の程度によって、支払う金額が決まる。

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