2022年11月号掲載

運動脳

Original Title :Hjärnstark:hur motion och träning stärker din hjärna (2016年刊 )

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著者紹介

概要

スウェーデンの精神科医が、運動が脳に与える影響について解説。定期的な運動がストレスに対する抵抗力を高める。暗記能力はランニングで強化できる。認知症予防には週5日のウォーキングが効果的…。運動の効用の数々が、科学研究の成果を踏まえ語られる。人生をより健やかなものとするために、身体を動かしたくなる1冊だ。

要約

脳から「ストレス」を取り払う

 これまでの研究によって、運動が脳の様々な機能に影響をおよぼすことがわかってきた。

 例えば、多くの人を悩ませている「ストレス」。今スウェーデンでは、病気休暇の最も多い理由がストレスだ。また、アメリカ心理学会によれば、同国の成人の72%が重いストレスを度々経験し、そのために42%が不眠に悩まされているという。

 こうしたストレスによる疾患には、運動が効果的であることが、研究によって立証されている。

緊張すると「ドキドキ」するのはなぜ?

 こんな場面を想像してみよう。あなたは大勢の同僚の前で、プレゼンテーションを始めようとしている。動悸が速くなり、口の中が渇いている。

 この時、体内では「コルチゾール」というストレスホルモンが放出され、その血中濃度が増加している。同僚はあなたの命を脅かしているわけではないが、身体は危機に直面したものと解釈する。コルチゾールの血中濃度が上がると、脳も身体も厳戒態勢に入る。脳は意識を集中させ、わずかな変化にも敏感になる。

イライラで「海馬」が縮小、物覚えが悪くなる

 プレゼンテーションが終わると、あなたのストレス反応は収束していく。脳と身体は脅威が去ったとみなし、コルチゾールの分泌量が下がる。

 重要なのは、ストレスを生む状況が去るとすぐにその分泌量が減るという点だ。コルチゾールが増えた状態で長時間活動するのは危険である。実は、記憶の中枢である「海馬」の細胞は、過度のコルチゾールにさらされると死んでしまう。そのため、慢性的にコルチゾールが分泌される状態が何カ月、何年も続くと、海馬は萎縮してしまうのだ。

 海馬は記憶の中枢であるため、ストレス反応がいつまでも治まらないと、短期間の記憶が損なわれることがある。言葉がうまく出てこなかったり、場所の認識ができなくなったりする。重いストレスを抱えている人の脳を調べると、実際に海馬が平均よりわずかに小さい。恐らくコルチゾールによってゆっくりと蝕まれてしまったためだろう。

運動で「コルチゾール」をコントロール

 ランニングなどの運動をすると、それを続けている間はコルチゾールの分泌量が増える。なぜなら、肉体に負荷がかかる活動は一種のストレスだからだ。しかし運動が終われば、コルチゾールの分泌量はランニング前のレベルまで下がる。

 ランニングを習慣づけると、走っている時のコルチゾールの分泌量は次第に増えにくくなり、走り終えた時に下がる量は逆に増えていく。

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