2021年1月号掲載

中国戦略“悪”の教科書 『兵法三十六計』で読み解く対日工作

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著者紹介

概要

中国の兵法書といえば『孫子』が有名だが、もう1つ忘れてならないのが『兵法三十六計』。その教えは『毛沢東語録』に引用され、中国指導者の発言にもよく登場する。本書では、元防衛省情報分析官が、現実に応用されている事象などを挙げつつ、各計をわかりやすく解いた。中国の対日工作の狙いを知る上で、参考となる1冊だ。

要約

日本に仕掛けられる『三十六計』

 中国は、歴史的に「戦わずして勝つ」ことを重視してきた。つまり、インテリジェンスを活用して、謀略を駆使してきた。

 その基本となるのが「兵法」であり、中国では歴史的に兵法書が編纂・体系化されてきた。

『孫子』以上の実用書、『兵法三十六計』

 中国の代表的な兵法書には、『孫子』『呉子』『司馬法』『尉繚子』『李衛公問対』『六韜』『三略』などがある。なかでも、『孫子』は最も体系化された至上の兵法書である。

 そして、もう1つ、中国には『孫子』と並び称される兵法書がある。それは、『兵法三十六計』(以下『三十六計』)である。

 『孫子』は為政者が愛用した哲学経典だが、『三十六計』は日常を生きる実践哲学として、民間で広く流通した。その教えは今日まで継承され、現代中国人はビジネスや国際・国内政治において、『孫子』以上の実用書として参考にしている。

連続する中国軍の異様な行動

 例えば、2015年11月11~12日、尖閣諸島と石垣島との間で中国の情報収集艦が約20時間徘徊した。12月23~26日には同艦が房総半島沖で数回、反復航行した。これらは極めて異例な行動だ。

 2016年1月3~4日には、4隻の巡視船が尖閣諸島のわが国接続水域内を航行。そのうち2隻は砲塔4基を装備していた。武装した法執行船が東シナ海に出てくるのは初めてのことだ。

 これらの動きは、中国が意図的に行動をエスカレートさせて、日本の対応を偵察しつつ、海洋支配の拡大を狙う「打草驚蛇:草を打って、蛇を驚かす」(第13計)であった可能性がある。

 小規模な偽装攻撃を行い、敵の反応をみる。これを「威力偵察」というが、打草驚蛇とはまさしく威力偵察のことだ。これによって、相手国政府などの真意を探るのである。

 このように、中国の対外行動には『三十六計』の応用と思われる節がいくつもうかがえる。その真実の意図を明らかにし、次の一手を考察する上で、『三十六計』を理解することが極めて重要だ。

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