2020年6月号掲載

イスラーム文化

国際・世界情勢文化・思想・歴史
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著者紹介

概要

イスラーム研究の世界的権威が、「イスラーム文化の根柢にあるもの」と題して行った講演を基に、この文化の源泉を解き明かす。いわく、イスラームは商売人の宗教である、すべての善悪は神の意志によって決まる…。誰の目にも映る表面的な姿ではなく、奥深いところにある本質、精神というべきものに迫った啓蒙書。

要約

イスラーム文化の宗教的基底

 イスラーム文化 ―― 。その根底にあるものとは何か。イスラームの最も特徴的と考えられることは何か。それを探っていこう。

アラビアの商人が興した宗教、イスラーム

 イスラームは、今や単なる宗教としてではなく、世界の動向を左右するほどの力をもった政治・経済勢力として、我々の前に現れてきた。しかし、根源的には、イスラームはあくまで宗教である。

 普通イスラームというと、人はすぐ砂漠を思い、イスラームを砂漠的人間の宗教思想として類型化する。しかし、事はそれほど簡単ではない。

 砂漠的人間とは、砂漠を移動しながら遊牧生活を送る、いわゆるベドウィンを指す。だが、イスラームを興した預言者ムハンマドは、砂漠的人間ではなかった。彼は、メッカとメディナという、当時のアラビアの国際的商業都市の商人であった。

 同じアラビア人といっても、砂漠の遊牧民と都市の商人とでは、メンタリティーも生活原理もまるで違う。ムハンマドは、砂漠的人間が一番大切にしていた価値体系そのものに真正面から衝突し、それとの闘争によってイスラームという宗教を築き上げた。聖典『コーラン』の中には、その闘争の模様が描かれている。

 ムハンマドはベドウィンに対して根深い不信の念を抱いていた。彼らが形式的には完全なイスラーム教徒になっても、容易に信頼してはいけない。ムハンマドはそう従者に警告していた。事あればすぐ寝返りを打って我々を裏切る人間だ、と。

商人言葉に満ちた聖典『コーラン』

 ムハンマドが生まれ、そして預言者として立ち上がったメッカは、国際貿易の中心地であった。後に、彼がイスラームを強固な共同体の宗教として確立するに至るメディナも商業的な町だ。メディナはユダヤ色の濃いところで、ユダヤ人がたくさん住んでおり、商業、金融業の中心地だった。

 聖典『コーラン』が商人言葉の表現に満ちているという事実は、この点で極めて示唆的である。人間がこの世で行う善なり悪なりの行為を「稼ぎ」と考えることなど、その典型的な例だ。

 「己れの稼ぎがもとで、人間1人が破滅することもあるということを皆に思い知らせてやるがよい。…結局そんな人々は己れの稼ぎで抜きさしならぬ破滅の道に深入りしてしまうだけのこと」

 ここでは人の背信行為が、不正な商売で稼ぐ悪銭にたとえられている。要するに『コーラン』では、宗教も神を相手とする取引関係、商売なのだ。

 このようにイスラームは、商売人の宗教 ―― 商業取引における契約の重要性を意識して、何よりも相互の信義、絶対に嘘をつかない、約束したことは必ず履行するということを何よりも重んじる、商人の道義を反映した宗教だったのである。

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