2018年6月号掲載

ベーシック・インカム入門 無条件給付の基本所得を考える

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著者紹介

概要

「ベーシック・インカム」とは、全ての人に無条件でお金を給付する、新しい社会保障の考え方である。今の所得保障の仕組みを根本的に組み換えるもので、それは、労働・家族関係などに対する国家の関わり方をも変化させる。単にお金の問題にとどまらない、この仕組みの概要、魅力などを、わかりやすく説いた入門書だ。

要約

ベーシック・インカムとは?

 「ベーシック・インカム(基本所得)」。これは、今ある所得保障の仕組みを根本的に別のものに組み換えよう、というものである。

 具体的には、次のような仕組みだ。

 例えば、医療、教育、介護、住居などにかかるお金がほぼ無料に近い社会を想定してみよう。そうした社会で、仮に毎月1日に全ての成人の銀行口座に国から10万円が振り込まれ、子どもには7万円が振り込まれるとする。

 2人の子どもを育てているシングルマザーであれば、3人で合計24万円の給付を受ける。子どもを保育園に預けて働きに出ることによって得られる収入が10万円だとすれば、それと3人分のベーシック・インカム24万円をあわせた34万円が、その家庭で使える1カ月分の金額となる。

 現行制度の、基礎年金や雇用保険、生活保護の大部分は廃止されて、ベーシック・インカムに置き換わる。この仕組みでは、全ての人にお金が支給されるため、生活保護を受けられずに餓死する悲劇も、「消えた年金」問題もない。

ベーシック・インカムに対する疑問

 上述のように、「無条件給付」という特徴が、現行の所得保障制度とベーシック・インカムとの最も大きな違いだが、この点について疑問を抱く人が多いだろう。

 その疑問は、大きく分けて2通りある。

  • ・生活に困っている人のための救済措置ならわかるが、金持ちにも給付するのはいかがなものか。
  • ・働く気のない怠け者に給付するのは良くないのではないか。

 私自身、ベーシック・インカムについて初めて耳にした時、嫌悪感をおぼえた。

社会が要求する制約に変化をもたらす

 現代人が持つ生きづらさや閉塞感は、生きるためにはお金が必要で、そのお金を得るために社会が私たちに要求することの理不尽さから来ている。

 例えば、社会は、生きるためには長時間の賃金労働に従事せよと要求する。その一方で、子どもが熱を出した時、保育園に迎えに行こうとする労働者は要らない、ということがしばしばある。

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