2018年4月号掲載

公文書問題 日本の「闇」の核心

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著者紹介

概要

森友学園への国有地売却、あるいは集団的自衛権の合憲解釈に関する記録など、国の方針に関わる公文書の破棄や隠蔽が相次いでいる。公文書の軽視、秘密の横行は国民の知る権利を傷つけ、ひいては国益を損なう。にもかかわらず情報公開に消極的な政府の姿勢を検証するとともに、公文書管理の重要性をわかりやすく解説する。

要約

記録を作らない「法の番人」

 2017年は、公文書管理に関する問題が次々と明らかになった年だった。

 南スーダン国際平和協力業務(PKO)における現地部隊の「日報」が短期間で破棄されていたこと、森友学園に8億円の値引きをされて国有地が売却された経緯がわかる文書が存在しないこと…。これらの問題が、安倍政権を大きく揺さぶった。

 安倍政権の閣僚は、問題の原因が公文書のずさんな管理にあるのに、管理はされていると開き直る発言が多い。公文書管理制度をより良くしようとする発想がほとんどないことに疑いはない。

内閣法制局長官の「強弁」

 例えば、2016年1月21日の衆議院決算委員会において、こんな発言がなされている。

 「内閣法制局における議論といいますのは、まさに法理についての議論でございます。そして、その一昨年(2014年)7月1日の閣議決定で示された考え方が、現行の憲法第9条、さらにはこれまでの政府の憲法の考え方(中略)に整合するものであるかについては、もちろん議論、検討をしたわけでございます。ただ、それを議事録というような形で残すという性質のものではないと考えております」

 発言の主は、横畠裕介内閣法制局長官。「法の番人」といわれる法制局のトップだ。この答弁は2014年7月に行われた集団的自衛権行使容認の閣議決定について、事前に与党幹部と協議した彼が、協議の記録を一切残さなかったことを正当化している場面。この閣議決定が、2015年に大きな反対の中で成立した安保法制の元になった。

 これまで日本国憲法下での集団的自衛権を「違憲」として認めてこなかった内閣法制局の方針転換である。だが、法制局はどのようにして憲法解釈を変えたのかということについて、理由のわかる行政文書を一切作っていなかったのだ。この事実は、毎日新聞がスクープしたことで発覚した。

 横畠長官は、国会で何度もこの問題を野党から追及された。特に追及されているのは、記録を残さなかったことが「公文書管理法」に違反しているのではないかという点だ。

公文書管理法とは何か?

 正式名称は「公文書等の管理に関する法律」。ここでいう「公文書」とは、行政機関が作成する「行政文書」と、独立行政法人等が作成する「法人文書」などを含む。この法律では、文書の作成から管理方法、保存期間満了後の措置(永久に残すか廃棄するか)までの、いわゆる「文書のライフサイクル」が法定化された。

 以前より、「消えた年金問題」のような、公文書管理のずさんさが国民に実害を与えた事例があったため、2009年6月に公文書管理法が衆参本会議で可決され、2011年4月から施行された。

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