2017年12月号掲載
「韓非子」を見よ!
- 著者
- 出版社
- 発行日2009年5月10日
- 定価628円
- ページ数252ページ
※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。
※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。
著者紹介
概要
人間は利益によって動く動物である ―― 。中国戦国時代の思想家・韓非子は性悪説に立ち、人間の本性をこう分析した。そうした視点の下、人間関係における誤りのない対応の仕方を説く『韓非子』。この中国古典のエッセンスを紹介する。組織掌握術、上司への進言の仕方など、現代のビジネスパーソンに役立つ金言も満載だ。
要約
人間通になる!
『韓非子』は、中国・戦国時代の思想家、韓非子の著作である。
西のマキアベリ、東の韓非子という言葉がある。この言葉から明らかなように、『韓非子』全篇を貫いているのは、“人間不信の哲学”である。
人間を動かしている動機は何か。愛情でも義理でも人情でもない。ただ1つ、利益である。人間は利益によって動く動物である、というのが韓非子の認識であった。このような厳しい人間観の上に立って、様々な人間関係における誤りのない対応の仕方を説いているのが『韓非子』なのだ。
では、対応を誤らないためには、どうすればよいのか。それには、じっくりと人間を読み、状況を読まなければならない。『韓非子』は、そのヒントを幾つも示している。例えば ――
人はまず利益で動く
『韓非子』の人間観察法の特徴は、何よりもまず「利」、すなわち利益に着目すること。彼はこの利益という視点を拠り所にして、人間の行動を見極めようとする。
例えば、次のような話を引いている。
昔、曽従子という、剣を鑑定する名人がいた。
たまたま当時、衛の君主は呉王に怨みを抱いていた。そこに目をつけた曽従子は衛の君主に会って、こう語った。
「呉王は剣の愛好家、私はその鑑定人でございます。そこで、剣を鑑定してやるというふれこみで呉王に会い、剣を抜きざま、その場で呉王を刺して差し上げましょう」
すると衛の君主は、「なるほど。だがそれをするのは義のためではなく、利のためであろうが。呉は豊かで国も強いのに対し、わが衛は貧しくて国も弱い。そなたが呉王に会ったとたん、ころりと態度を変えて、その手をわしに使うのではないか」。そう言って曽従子を追い払った ―― 。
衛の君主は、深読みしすぎたのだろうか。そうかもしれない。だが、人間が利益によって動く動物だとすれば、当然、損か得かの判断が行動の基準になる。従って、弱い者よりも強い者になびくことは避けがたい。