2017年11月号掲載

元日銀審議委員だから言える 東京五輪後の日本経済

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著者紹介

概要

著者は元日本銀行審議委員。白川前総裁と黒田現総裁のもと、日銀が様々な金融政策を実行する場に立ち会ってきた。この、わが国の金融政策の最前線にいた経験をもとに、日本経済の現状、そして今後を語った。2013年に始まる「異次元緩和」の功罪を徹底検証するとともに、2020年の東京五輪後の日本経済のゆくえを見通す。

要約

「異次元緩和」に踊る日本経済

 今、東京都心の不動産価格が高騰している。

 そのきっかけは、日本銀行による「異次元緩和」と「東京五輪開催決定」だ。異次元緩和による大量のマネー供給と、五輪開催特需への期待とが、不動産価格を押し上げることになった。

 また、株価についても、異次元緩和がスタートして約2年後の2015年5月、日経平均株価は2万円の大台を回復。2017年には2万円の大台をキープする場面が多くなった。

株価の高値は外国人主導

 この株式市場について注目すべきなのは、現在の日本の株式市場が、日本人の主導ではなく、外国人の主導で動いているという点だ。

 2012年末に始まる株式相場の活況は、この時誕生した第2次安倍政権の「アベノミクス」に対する、マーケットの期待からもたらされたものだ。

 外国人投資家たちが、「大規模な金融緩和政策によって、今後、円安になり、日本の輸出関連企業の株価が上がるに違いない」と予想して、円を売り、日本株を買うという行動に出たのである。そのため、円安と株高が同時に進行した。

 1980年代のバブル期の外国人株式保有率は、多い時でも時価総額の7%ほどだった。だが、アベノミクス以降は30%前後にまで達している。

 外国人投資家、特にヘッジファンドは、短期でどれだけ儲けを出せるかということしか眼中にない。従って、儲からないと思えば、あっさりと日本株を売る。彼らが日本の株式市場での保有比率を高め、その気まぐれな売買動向に市場が大きな影響を受けるのは、決して健全な状態ではない。

日本銀行による「ETF買入」のインパクト

 日本銀行は白川方明総裁時代の2010年から、ETFの買入を開始した。その後、買入額を拡大したものの、年間7000億円程度にとどまっていた。

 だが、2013年4月、黒田東彦新総裁のもとスタートした異次元緩和に伴い、ETFの買入額を年間1兆円程度へ増額。2014年には「追加金融緩和」を決定して、ETFの年間購入額を3兆円程度へと増やし、さらに2016年には6兆円程度もの巨額な資金をETF購入に充てることを決定した。

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