2017年10月号掲載

仕事消滅

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著者紹介

概要

AI(人工知能)の発展が著しい。識者の予測では、2035年には仕事の半分以上がAIとロボットに奪われるという。この「仕事消滅」はどのように起きるのか? どんな仕事から消え、人の生活はどうなるのか? 人類にとって重大かつ緊急の問題を、経済学の観点から考察するとともに、AIの時代を生き抜くための処方箋を提示する。

要約

仕事はなぜ消滅するのか?

 2016年から2017年にかけて、グーグルの「アルファ碁」というAI(人工知能)は、人類最強の囲碁のプロ棋士たちを打ち負かした。

 このAIは膨大な数の先人たちの棋譜を眺め、囲碁の定石、打ち手を自力で学習した。その結果、プロ棋士を超える思考力の領域に到達したのだ。

 アルファ碁は2017年に世界最強の棋士に勝利した後、囲碁の世界から引退を表明した。

 世界が驚いたのは、その後だ。グーグルは、アルファ碁同士が対戦する50局の棋譜をウェブ上で公開した。それは、囲碁の専門家が思いもつかない新しい布石での戦いだった。それらの棋譜の研究は、これからの棋士たちの新たな課題であり、AIから囲碁界への贈り物となった。

 こうして囲碁の世界で、AIは人類の思考力を超えたのだ ―― 。

なぜ、誰も脅威だと言わないのか?

 この数年、AIは脅威を感じさせるほど発展した。にもかかわらず、世の中には平然としている人が多い。こうした人は、「AIが人類の仕事を奪う」と言っている人間は「狼が来るぞ」と叫んでいるただの狼少年だ、と考えているのだろう。

 実はこの現象は、これまでに何度も起きてきた「よくある現象」だ。

 イノベーションの種が発明されて、市場にプロトタイプの商品が出ると「これで市場が破壊されるぞ」と騒ぐ人が出てくる。その一方で、大半の業界の人は「おもちゃだね」と小馬鹿にする。

 その段階から破壊的イノベーションの脅威が現実になるまでの時間は、ほぼ共通して20年程度、そして古い業界最大手が消えていくのが30年後であることがわかっている。

 1981年、ソニーが「マビカ」というデジカメの元祖ともいうべき商品の試作品を発表した。この時の市場の反応も同じだった。将来デジカメの時代が来ると騒がれる一方で、写真市場はそれ以後もフィルムを使った銀塩カメラが主流だった。

 そして1995年、カシオがQV-10という初のデジカメのヒット商品を発売。この頃になって、ようやく大手フィルムメーカーのトップが危機感を口にするのだが、その意見ですら「市場としては、高性能のフィルム方式のカメラと、低性能のデジカメが棲み分けることになる」と断言していた。

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