2017年10月号掲載

中国バブルはなぜつぶれないのか

Original Title :剛性泡沫

中国バブルはなぜつぶれないのか ネット書店で購入
閉じる

ネット書店へのリンクにはアフィリエイトプログラムを利用しています。

※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。

※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。

著者紹介

概要

不動産市場の高騰が続くなど、いまだ弾けない中国バブル。なぜか? 中国人経済学者の著者によれば、バブルの裏には、政府が銀行や企業などに与えている「暗黙の保証」がある。政府の保証があればこそ、人々は安心して投資を続けるというわけだ。本書は、こうした中国経済の仕組みを明らかにし、その潜在的リスクを検証する。

要約

無傷のデフォルト

 本書は、中国の経済成長を、中国政府の提供する「暗黙の保証」という観点から検証するものだ。

 この30年間、中国の経済成長にとって強力かつ重要な原動力となってきた政府による保証は、同時に、現在中国が直面している課題の大きな要因ともなっている ―― 。

デフォルトに驚かない中国の投資家

 2014年1月、中誠信託が販売した信託商品の1つが、デフォルトのリスクに直面した。中誠信託と中国工商銀行から30億元(約5億米ドル)の融資を受けていた石炭会社、山西振富能源集団が石炭価格の下落などにより、経営難に陥ったのだ。

 この事件で投資家の注意を引いたのは、中誠信託が、自分たちは販売を仲介したにすぎないと主張したことだった。この商品の実質的な保有者かつ保証人は、中国最大級の銀行、中国工商銀行だ。同行も、このデフォルトに責任はなく、元利返済の責任もないと主張した。

 信託商品の目論見書と販売契約書に各関係者の責任について記載があるにもかかわらず、両者がこうした姿勢を示したことは、中国のシャドーバンキングビジネスにとって興味深い先例となった。

 そして欧米ならばデフォルトは大騒ぎに発展するが、上記のケースでは、債権者や債務者は冷静だった。その理由を理解することは、中国の経済や金融システムを理解するためのカギとなる。

銀行とシャドーバンキング

 中国のシャドーバンキングは、銀行セクターの成長とともに驚くべきスピードで成長してきた。なぜ、急速に成長したのか。

 2009年に不動産市場が急上昇しはじめると、監督当局から銀行に、不動産ディベロッパー向けの貸し付けを圧縮せよとの指示が出た。このため、銀行は自らの事業を簿外に移すようになった。

 中国のシャドーバンキングシステムは、中小企業、過剰生産能力を抱える多くの産業、地方政府の債務返済のための資金調達、また、地方政府の財政資金の調達で、大きな役割を担っている。

膨れ上がるリスキーな商品

 先に触れた中誠信託と中国工商銀行は富裕層顧客に対し、山西炭鉱関連の商品販売時に年率9.5~11.5%のリターンを約束していた。このような商品は高リターンであることに加え、一般的に非常に安全だと思われている。

この本の要約を読んだ方は、
他にこんな本にも興味を持たれています。

共感経営 「物語り戦略」で輝く現場

野中郁次郎 日経BP・日本経済新聞出版本部

ポストコロナの経済学 8つの構造変化のなかで日本人はどう生きるべきか?

熊谷亮丸 日経BP

グレート・リセット ダボス会議で語られるアフターコロナの世界

クラウス・シュワブ 日経ナショナル ジオグラフィック社

絶望を希望に変える経済学 社会の重大問題をどう解決するか

アビジット・V・バナジー 日経BP・日本経済新聞出版本部