2020年8月号掲載

共感経営 「物語り戦略」で輝く現場

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著者紹介

概要

かつて、アダム・スミスは『道徳感情論』において、「他者に対する共感」の重要性を提起した。その共感の思想が、260年を経た今、改めて世界中の経営者の注目を集めている。「資本主義の再構築」に向けての議論の中で浮かび上がってきた共感。この思想を読み解きながら、いちはやく経営に取り入れている事例を紹介する。

要約

「共感」と「物語り」が紡ぐ経営

 2019年7月、著者の野中郁次郎は“経済学の祖”アダム・スミスの英国にある旧宅において開かれた会議に招聘された。

 会議のテーマは「資本主義の再構築」。各国から様々な分野の学者や企業家たちが参加した。

“アダム・スミスの原点”に戻る

 自国の利益を優先する「新重商主義」が世界に広まる中、資本主義とグローバルな秩序をいかにしてつくり直すのか。その議論において最も注目が集まったのは、「今こそアダム・スミスの原点に戻るべきである」との問題提起だった。

 その問題提起の中心となった概念は「他者に対する共感」だった。個人が利益を追求すると、「見えざる手」(市場の価格調整メカニズム)により、社会的な利益につながる。自由競争の効用を説くのが、彼の著作『国富論』のメッセージである。

 しかし、自由競争が強調された結果、株主資本主義への過剰な傾斜を招き、社会に歪みが生じてしまった。その危機感から、会議で関心が集まったのが、スミスの著作『道徳感情論』だった。

 『道徳感情論』において、スミスは、人間の心の作用の本性は「他者に対する共感」にあると説く。他者に対する共感をもとに社会の規律が導かれ、「見えざる手」により、よりよい社会が形成され、その上で自由競争が成り立ち、社会の利益が促進される。

 スミスが説いた他者に対する共感と、それに基づく社会の規律を再認識すべきという観点から、会議では顧客への共感の重要性と、株主資本主義偏重の誤りが確認されたのである。

 また、従業員の位置づけも議題となった。従来、従業員は使い捨ての「人的資源」として扱われてきた。だが、知識が資源となる知識社会では、彼らの重要性が増大する。その時、従業員同士、あるいは経営者と従業員との間での共感が新しい知を生む原点となると、認識を新たにしたのだ。

米経済界も「脱・株主第一主義」を宣言

 ―― これまでの「株主第一主義」を根本から見直すことを宣言する。

 声明文では尊重する利害関係者の優先順位を、①顧客、②従業員、③取引先、④地域社会、⑤株主とした。株主利益は5番目に位置づけたのだ。

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