2017年5月号掲載

楕円思考で考える経営の哲学

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著者紹介

概要

「楕円思考」とは、楕円が2つの焦点を持つように、常に対極にある2つの見方からものごとを考えること。自と他、双方が自分の原点をしっかり持ちながら、相手の存在も認める。元・花王会長の著者によれば、この考え方を企業活動に落とし込むことで、従来の米国流経営では得られない、新しい発見、発想が生まれるという。

要約

楕円思考のすすめ

 英国のEU離脱に続いて、米国に「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ新政権が誕生し、今、世界は固唾を呑んでその動向を注視している。

 グローバル化を先導したこの2つの経済大国が、もし本当に反グローバリズムに舵を切るならば、世界経済に与える衝撃は計り知れないものがある。

 ところで、先の大統領戦で米国メディアのほとんどは、クリントン候補の当選を予想して、見事に外れてしまった。日本のメディアも「右へ倣え」であたふたするばかりだった。

 トランプ・ショックと呼ばれた一連の騒動を見ていて、私が思ったのは、今の日本人は変化に対する感性が鈍化したのではないか、ということだ。

無常観の喪失

 かつては、世は移ろいゆくもの、変化こそ常態なりという無常観を、日本人は誰もがもっていた。そこから急激な社会変化に直面しても動じない心性を培うことができた。

 その伝統的心性を端的に伝えているものに、鎌倉前期の歌人・鴨長明の『方丈記』がある。

 「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例なし。世の中にある、人と栖と、またかくのごとし」という有名な書き出しで始まる随筆である。

 鴨長明の生きた時代は、平安貴族の摂関政治が崩壊し、武士の世に移る転換期だった。源平の争乱が続き、社会は混乱し、荒廃した。その上、各地で大火や地震、疫病の流行等の災害に見舞われた。その様相を『方丈記』は冷静に描写している。

 かつての日本人は、そのようにして変化や異変と向き合ってきた。後述するが、これは一種の「楕円思考」といってもいい。

 翻って今、私たちは世界で起きる衝撃的なニュースに接する度に動揺することが多い。それは、今ここに見えている現実が、明日も同じように続くと思いこんでいるからである。そうではなく、今ここに現存するものも明日は消えてしまうかもしれない、という考え方だってできるはずだ。

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