2015年5月号掲載

イスラームの日常世界

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著者紹介

概要

毎日のように、マスコミが報じるイスラーム関連のニュース。それらはテロ、紛争など、圧倒的に非日常的なものばかりだ。当然ながら、そうした報道の裏側には、人々の日常世界がある。弱者には無条件に手を差し伸べる、「ラーハ(安息)」の時間を何より大切にする…。長年、実情を見てきた著者が、人間観、生き方をはじめ、彼らの知られざる姿を明らかにする。

要約

人間は強いか弱いか

 その昔、西暦614年頃、メッカで、預言者ムハンマドがイスラームを伝え始めた時、その信者はわずか数人だった。その後1400年近くをへて、イスラームは地球的規模で広がっている ―― 。

イスラームと西洋

 イスラーム世界は、かつて古代ギリシャ・ローマ文明の遺産をアラビア語に翻訳し、これを発展させて、西洋に伝えた。西洋のルネッサンスは、イスラーム世界の存在なくてはあり得なかった。

 近代以前には、学術、文化、産業、経済、社会、技術などあらゆる面で、イスラーム世界は、西洋よりはるかに進んでいた。西洋側では、イスラーム世界の栄光はまぶしく、脅威でもあった。

 暗い時代に沈んでいたヨーロッパは、イスラーム世界の絢爛たる都市文明に対して、十字軍を送り込んだ。十字軍以来のイスラームに対する西洋人のコンプレックスは根深い。

 20世紀後半になり、西洋文明の行き詰まりが自覚される中、英国、米国などの都市に多数のモスクがたてられた。デンマークやオーストリアでもムスリム(イスラーム教徒)への改宗が増え、イスラームが欧米世界でも第2の宗教となっている。

イスラームは宗教か?

 イスラームもキリスト教や仏教と同じく宗教だ。しかし、イスラームは「宗教」という言葉にぴったりしないといわれる。なぜならイスラームは、その信念体系の上に築きあげられる生活の全体、文化の総体を指すものだからである。

 多くの宗教とは異なり、人間の精神の救済や心の問題にだけ重要性をおかない。人間が生きていく上の、すべてのことと関わるのがイスラームだとされる。政治、経済、社会、文化など、人間のあらゆる営みに関係するものなのである。

 しかも、特定の人間ではなく、地球上の人たちすべてのものであるとする。人種も、民族も、国籍も、階級も超えて形づくられる人間共同体の構成原理となるものだと考えられているのである。

人間性強説 ―― 近代西欧人の誕生

 歴史の流れをみると、科学はながらく哲学と結びつき、それなりの倫理を内包していたが、近代科学は倫理とは無縁の「技術」と結びつき、機械システムによって地球を覆うことが目標とされた。

 本来、科学は、ものごとを絶対視することを排し、すべての事物を相対化してみようとするものであった。しかし、自然の中に法則性を発見し、自然を論理体系の上に整理するということが、科学の方向として唯一絶対視された。

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