2015年4月号掲載

ナンバーセンス ビッグデータの嘘を見抜く「統計リテラシー」の身につけ方

Original Title :NUMBERSENSE

ナンバーセンス ビッグデータの嘘を見抜く「統計リテラシー」の身につけ方 ネット書店で購入
閉じる

ネット書店へのリンクにはアフィリエイトプログラムを利用しています。

※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。

※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。

著者紹介

概要

「ナンバーセンス」とは、統計のリテラシーのこと。問題のあるデータを見た時に何かが違うと感じる、罠を見抜く知恵だ。ビッグデータの時代、判断を誤らないためには、ナンバーセンスを磨くことが欠かせない。本書では、共同購入クーポンサイト「グルーポン」など、身近な例を基に世の中のおかしな分析を明らかにし、統計リテラシーの大切さを説く。

要約

「ナンバーセンス」とは

 ビル・ゲイツの人生は、アメリカの典型的なサクセスストーリーだ。超優秀な若者が大学を退学し、起業してつくったソフトウェアは全世界のコンピュータの90%を動かすまでになった。

 桁外れのカネを稼いだら早々に引退。巨額の私財を慈善活動に投じている。ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、途上国のマラリア対策やエイズ研究などに大きな支援を行い、高く評価されている。

 また、データを重視して判断を下すことでも知られている。ただし、データに基づいていれば判断を誤らない、という意味ではない。

 2000年以降、ゲイツ財団は学校の小規模化を奨励し、全米で数多くの学校を支援してきた。アメリカの教育界では当時、「成績ランキングの上位に小規模な学校が多い」という統計上の発見が注目されていた。例えば、ペンシルベニア州の小学5年生のリーディングの成績は、上位50校のうち12%が小規模な学校だった。

 ゲイツ財団は学校の規模がカギを握ると考え、1学年100人までを目安に、大規模な学校を分割する改革を提案した。例えば、ワシントン州のある高校の全校生徒1800人は、2003年度から5つの学校に分かれた。ゲイツ財団の教育部門の事務局長は当時、次のように説明した。

 「小規模な学校は(大規模な学校に比べて)前向きな雰囲気や高い期待が生まれやすく、改良されたカリキュラムで適切な指導が行われやすい」

常に正しい答えを出せる人はいない

 だが10年後、ゲイツ財団は方針を転換した。学校の規模を、成績向上の唯一の解決策と考えるのをやめたのだ。というのも、財団が調査した結果、規模を縮小した学校で生徒の成績が向上しておらず、むしろ低下した例もあったからだ。

 この数百万ドル規模の判断ミスに対し、経済学者のハワード・ウェイナーは回避できたはずだと指摘した。例えば、先に挙げたペンシルベニア州の5年生のリーディングの成績は、上位50校のうち12%が小規模な学校だっただけでなく、下位50校のうち18%も小規模な学校が占めていた。つまり、最下層でも小規模な学校が多いのだ。

 データ分析は厄介な仕事で、常に正しい答えを出せる人などいない。官僚であれ専門家であれ、どんなに優秀な人でも間違える余地は必ずある。

 学校の規模に関する分析では、小規模な学校ほど成績が良いという説は、裏づけとなる数字がなかった。学校の規模と成績の間に相関関係が存在するとしても、学校の規模が、成績という結果の原因になると結論づけるには不十分だ。

この本の要約を読んだ方は、
他にこんな本にも興味を持たれています。

柴田和子 終わりなきセールス

柴田和子 東洋経済新報社

直観を磨く 深く考える七つの技法

田坂広志 講談社(講談社現代新書)

プロフェッショナル経営参謀

杉田浩章 日経BP・日本経済新聞出版本部

LIMITLESS 超加速学習 人生を変える「学び方」の授業

ジム・クウィック 東洋経済新報社