2014年9月号掲載

世阿弥の言葉 心の糧、創造の糧

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著者紹介

概要

室町時代の能役者、世阿弥。能楽という身体芸術を大成した彼は、言葉に対しても天才だった。「初心忘るべからず」「稽古は強かれ、情識(傲慢)は無かれ」「目前心後(眼は前を見ているが、心は後ろに置いておけ)」…。『風姿花伝』等の伝書から紹介される言葉は、今も色褪せず、心に響く。人生、ビジネスで悩んだ時、世阿弥の言葉は、貴重な示唆を与えてくれる。

要約

世阿弥の言葉

 世阿弥は、1363年から1443年まで生きたとされている。650年前に生まれた世阿弥の言葉は、今も有効である。そこには、現代にも有効な生きるための糧があり、創造の糧がある。

「初心忘るべからず」

 この言葉が登場するのは、世阿弥の『花鏡』という伝書(自分の子供や後継者に、自分の考え方や経験を伝えるために書いたもの)である。

 この言葉は誰でも知っている。その意味は、通常は、初めの志を忘れてはならない、と理解されている。この理解は間違いとはいえないが、世阿弥がいいたかったことはもう少し深い。

 世阿弥にとっての「初心」とは、新しい事態に対応する時の方法であり、試練を乗り越えていく戦略や心構えのことである。つまり、初心を忘れるなというのは、人生の試練の時に、どうやってその試練を乗り越えていったのかという戦略や心構えを忘れるなということなのだ。

 しかも世阿弥は、初心は3つあるという。言い換えれば、3つの試練の時があるといっている。

 最初の初心は、若い時の初心だ。次に、人生のそれぞれの時にまた初心がある。そして、最後に老後の初心がある。世阿弥はいう。

 「老後の初心忘るべからず」

 若い時の初心を忘れてはならないのは、若い時の失敗や試練を忘れないことが、後の成功の糧となるからだ。

 つまり、普通に考えられているような「最初の志」ではなく、未熟であった時の最初の試練や失敗こそが、初心という言葉の本当の意味である。試練や失敗のない者は、本当の成功はおぼつかないといっているのだ。

 人間にはいつも試練が訪れる。何か新しいことがあれば、それはいつでも試練だ。その時に助けになるのは、かつての若い時の失敗、試練である。

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