2014年6月号掲載

社会保障亡国論

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著者紹介

概要

社会保障論を専門とする経済学者が、日本の社会保障財政について論じた書である。現在、わが国の社会保障給付費は110兆円超(GDPの約4分の1)、年間3~4兆円のペースで急増している。財政再建のため消費税率が8%に引き上げられたが、著者いわく、たとえ10%でも「焼け石に水」。社会保障を取り巻く危機的状況を数字で示し、抜本改革の必要性を訴える。

要約

財政から語る社会保障

 2014年4月から、わが国の消費税率は5%から8%に引き上げられる。また、15年10月以降、さらに10%への引き上げが行われる予定だ。

 今回の消費税引き上げの目的は、「社会保障の充実・安定化と、そのための安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指す」こととされている。

 しかし、この消費税率引き上げによって、本当に、社会保障の安定化や財政再建を果たせるのか。

 残念ながら、答えはノーである ―― 。

一般会計の社会保障費は氷山の一角

 現在、日本の社会保障費はどれくらいの規模になっているのか。

 2013年度の国の「一般会計」に占める「社会保障関係費」をみると、その規模は29.1兆円、一般会計全体の31.4%を占める。公共事業費が5.3兆円、将来への教育・研究投資である「文教及び科学振興費」も5.4兆円だから、社会保障関係費が、いかに大きな金額を占めているのかよくわかる。

 もっとも、この一般会計の社会保障関係費は、日本の社会保障費の全体像ではない。29.1兆円という金額は、社会保障にかかっている費用のほんの一部分、氷山の一角にすぎないのである。

 社会保障関係費とは、国の税金(および借金)から支払われている費用のことだが、日本の社会保障制度の大半は税金で賄われる仕組みではない。

 では、保険料で賄われる分も含め、社会保障給付にかかっている全費用(社会保障給付費)はいくらなのかと言えば、現在、何と110.6兆円(13年度予算ベース)という規模に達している。

 この社会保障給付費に、医療や介護で国民が自己負担として支払っている分を足すと、国内総生産(GDP)の4分の1程度の金額が社会保障費に使われていることになる。

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