2009年5月号掲載
「易経」一日一言 人生の大則を知る
概要
5000年の長きにわたって読み継がれてきた東洋の古典、『易経』。元々は占いに関する書だが、これをよく学べば時代の変化を見抜く洞察力や直観力が身につくと、古代中国の君主らに好んで読まれた。この書の中から、現代に生きる我々に特に役立つ366の箴言を選び、簡潔に解説する。ビジネスをはじめ、人生に生かせる智恵が詰まった1冊である。
要約
時と兆しの専門書、『易経』
『易経』は、易占のための書として発展した書物であるが、古代中国の君主がこぞって学んだ帝王学の書でもある。
それは、この書物をよく学べば、占わずして時の変化の兆しを察する洞察力、直観力を身につけることができるからだ。
この易経の根底には、陰陽思想がある。
易経では、世界の大本には「太極」―― まだ陰にも陽にも分かれていない混沌としたエネルギーがあり、そこから陰陽が分かれる、とする。
すなわち、陰と陽は実際には1つの存在であり、1つの物や事象には陰と陽の両面がある。
例えば、人間ならば、長所(陽)と短所(陰)の両方を持ち合わせている。
これら対立する陰陽が、対になって作用し合うことで全ての変化が生じる。静(陰)があるから動(陽)がある。季節は冬(陰)から夏(陽)へと、そして夏は冬へと向かい、春夏秋冬が巡る。
また、陰陽は変化して循環するだけでなく、交ざり合うことで新たなものを生む。男女が交わって新しい生命が誕生するように。
このような陰陽思想に基づく易経には、変化を読み取り、対応する術を見出すための智慧が詰まっている。例えば ――
天地の道は、恒久にして已まざるなり。
天地の道は永遠に続いてやまない、ということである。
「恒久」は、永遠に変わらないの意。しかし、止まって動かないわけではなく、1年が春夏秋冬と巡るように、常に変化発展していく。