2008年4月号掲載
なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして、日本では人が大切にされるシステムをつくれないのか
- 著者
- 出版社
- 発行日2008年3月15日
- 定価1,540円
- ページ数189ページ
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著者紹介
概要
医療費、そして小学校から大学までの教育費が無料など、世界最高レベルの社会福祉制度で知られるデンマーク。当然、税金も高くなるが、国民に不満はなく、国家財政も黒字である。こうした高福祉国家が成り立つのはなぜなのか? 長年デンマークに暮らす著者がその理由を明かすとともに、日本が社会福祉国家になれない原因と、改善すべき点を鋭く指摘する。
要約
理想の国家、デンマーク
デンマークでは、出産費用に始まって葬儀代まで国家が負担する、いわゆる「ゆりかごから墓場まで」の社会福祉政策がとられている。
病院の入院・治療費も無料である。また、生活保護制度や年金制度が充実しており、老齢者に対する手厚い自宅介護支援の仕組みもある。
教育も原則無料である。医療費と同様、国民全員で負担するという考え方を導入しているからだ。
その根底には、教育は国家を支える人材を育成する国家的事業だという考え方がある。教育の成果は個人に恩恵をもたらすばかりでなく、社会を豊かにすると考えられているのである。
また、デンマークでは日本のように大学入学試験がない。高等学校3年間の全ての科目の平均点数で入学できる大学と学部が決まるので、高校教育が大学入試を目標に行われることもない。
大学教育は常に実社会との関係を重視して行われているから、専門的に学んだ学問が卒業後の仕事と直接結びつく。
「学校教育の目的は、個人が持つ能力や才能を社会のために育成すること」。この教育理念がとてもはっきりしているのである。
デンマークではまた、主食とする豚肉や肉製品、バター、チーズなどの酪農製品は、カロリーベースで300%の自給率を実現している。これは農業者による自立的営農の結果で、自給率を高めるために政府が支援策を打ち出しているわけではない。
エネルギーも1997年には完全自給に達し、2005年の自給率は欧州諸国で最高率の156%になり、その一部を輸出に回している。
この背景には、国家を維持する上で必要な施策を国民全体が理解し、中央政府や行政の指導を待つまでもなく行動に移すという国民性がある。
例えば、73年のオイルショックの時、それまで外国の石油にほぼ100%依存していたデンマークでは、市民が先駆けて風力発電を導入し、2000年頃には風力発電を一大産業に育て上げた。