2007年4月号掲載
ものを考える人 「頭をよくする生活」術
著者紹介
概要
ものを考える力は人生を豊かにする。本当にやりたいことは何で、どんな人生を送りたいのかということを真剣に考えねばならない ―― 。そう語る渡部昇一氏が、「ものを考える力、生み出す力」の身につけ方を、自身の人生体験を踏まえて述べる。考える力をつける環境づくり、生産的な読書術、時間活用術など、自分を高めるためのヒントの数々が紹介される。
要約
「生きた手本」を徹底的に吸収する
チャールズ・ダーウィンは、「人間にとって重要なのは、頭のよさよりも心の態度である」と言った。
つまり、価値ある人生を送る上で本当に必要なのは、学問の世界で言う頭のよさではなく、真剣にものを考える態度だと言いたかったのだろう。
彼は、小さい時は勉強ができなかったが、自分が興味を持ったことは納得するまで追求する粘り強さを持っていた。そして最終的には、『種の起源』という学問的成果を残した。
いわゆる「カミソリのような頭」ではなくても、深い興味と探求心、人生で一番大事なことを見極める力さえあれば、歴史的な業績をおさめることも不可能ではないのだ —— 。
* * *
我々にとって一番大きな生きがいとは、自分が本当にやりたいことをやり、真に人間らしい一生を送ることである。
その意味で大切なのは、“志を立てる”ということだ。自分は何がしたいのか。何をもって自己実現し、社会に尽くしたいのか。まず、それを見極めることである。
では、人間だけが持つ、ものを考える能力を十分に生かし、より高いレベルの志を実現するにはどうしたらよいか?
それには物事を深く学び、頭を鍛えることが欠かせない。その手っ取り早い方法は、次の2つだ。
よき師を持つ
何かを勉強する場合、「師」はその道の先達として重要な役割を果たす。この師は、自分が何を学ぶかによって、2つに分かれる。
例えば、自然科学のような分野を志すとすれば、師が積み重ねた学問的な成果や知見、さらにはその到達したレベルにたどりつく方法は比較的はっきりしている。しかし、芸術や文学のような分野を志すとすれば、師の到達したレベルにたどりつく方法は、明確には示されないのが普通だ。