2006年4月号掲載

貯蓄率ゼロ経済

経済・経済学
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著者紹介

概要

人口減少時代を迎えると、低成長により、物価が安定し、低金利になるといわれている。だが、まさに少子高齢化時代に突入した日本では、高齢者の貯蓄の取り崩しの増加で、家計貯蓄率が下がり続けており、このままでは、円安、インフレ、高金利の「貯蓄率ゼロ経済」が出現してしまう。この貯蓄率ゼロ経済を我々はどう生きればよいのか、その答えを模索する。

要約

消えた「高貯蓄率神話」

 バブル崩壊後の日本経済では、当然のことと信じられてきた神話の多くが音を立てて崩れ去った。家計の貯蓄率が高いこともその1つである。

 日本経済の全体像を示すGDP統計(国民経済計算)で見ると、家計貯蓄率は1980年度には17.0%だったが、2003年度には7.8%にまで低下した。

 また、OECD(経済協力開発機構)のデータをもとに国際比較をすると、80年の日本の貯蓄率は17.3%で、米国(10.1%)、フランス(12.2%)、英国(9.2%)などと比べて明らかに高かった。

 しかし、03年の貯蓄率は7.4%。ドイツは10.7%、フランスは11.1%で、日本よりもかなり高い。

 今では日本の「高貯蓄率神話」は、はるか昔の話になってしまったのだ。

 普段、我々が新聞などで目にする家計貯蓄率の数字は、このGDP統計の家計貯蓄率の他にもう1つある。それは、総務省が全国の家計簿を調査し、発表する「家計調査」の黒字率(=貯蓄率)だ。

 家計調査は、全国の約9000世帯に毎月家計簿をつけてもらい、何をいくら買ったかという詳細な報告をしてもらっているものである。

 この家計調査で見ると、04年の1カ月の可処分所得は44万4966円で、うち11万4129円が毎月貯蓄されている。貯蓄率は25.6%で、GDP統計の数字よりはるかに高い。

 この家計調査の貯蓄率が、1980年代から最近まで上昇していたため、日本では欧米と違って、年金生活者も貯蓄をしており、高齢化が進んでも貯蓄率は低下しないという誤解が生まれた。

 こうした誤解が生じたのは、高齢者の貯蓄率として専ら利用されてきた家計調査の貯蓄率が、「勤労者世帯」のものだったことに原因がある。

 家計調査は全国のほとんどの世帯を調査対象にしているが、収入と支出の両方を調査するのは、かつては勤労者世帯だけで、それ以外の世帯については支出だけを調査していたのだ。

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