2005年12月号掲載

何のために生きるのか

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著者紹介

概要

作家の五木寛之氏と京セラ創業者の稲盛和夫氏。これまで、文学界と経済界という全く異なる分野で時代をリードし続けてきた2人が、初めて対談を行った ―― 。本書は、その内容を余すところなく収録したもの。「今の日本人に、何が失われてしまったのか」「自力か他力か」「人生の目的は何か」…。現代人が今、再認識しなければならないテーマについて語られる。

要約

合う音は相互によく響く

稲盛:今日は五木さんとお目にかかるのを非常に楽しみにしてきました。というのは、“たましい”が似ているのではないかという直観があったからです。たましいの部分で何となく波長が合いそうな感じがしていたんです。

五木:プラトンは、『饗宴』の中で「ハーモニー」ということをいっています。音には、合う音と合わない音がある。だから人間対人間でも、その波長、リズムが共鳴するような波動の音階があるのではないかと思うのです。

 そして合う音は相互によく響く。よく響くことによって、もう1つの新しい音が生まれてくるというようなことが、人間対人間の中でも、あるような気がします。

 僕は、そういう実感を、今非常に大事にしなければならないと思っています。情報が氾濫している中で、自分の実感を情報によって修正していくことがしばしばあります。でも、後になって振り返ると、やはり最初に直感的に感じたことが正しかった、というようなことは非常に多い。

 今、情報といわれているものは、本来の意味での情報ではないと思います。本当の情報というのは、人間のこころの中の感情をきちっと把握してそれを伝えることなんです。

 斎藤茂吉の編んだ『万葉秀歌』の中に、大伴家持の歌が出ています。「うらうらに照れる春日に雲雀あがり情悲しも独しおもへば」というのですが、「こころ」という字は「情」が当ててある。情とは日本人の“こころ”なんですね。

稲盛:20世紀は知的な活動によって、素晴らしい展開を遂げました。その結果、確かに物質文明は豊かになったけれども、その一方で、“情”とか“こころ”が忘れられてきてしまった。

 しかし、実はこころの動きが一番大事なんですね。知的な活動の大本も、こころの動きから始まる。ほんとはこころをもっと大事にしてくるべきだったという気がしてなりません。

 スピリチュアルなものははっきり目に見えないからどこか怪しい、という考え方が常識として続いていたのですが、今世界的な流れとして人間のこころの問題を、例えば経済学にも政治学にも導入していかなければならないのではないか、というふうに変わってきていると思います。

 

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