2005年7月号掲載

大英帝国衰亡史

大英帝国衰亡史 ネット書店で購入
閉じる

ネット書店へのリンクにはアフィリエイトプログラムを利用しています。

※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。

※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。

著者紹介

概要

小さな島国であるイギリスは、かつて7つの海を支配し、長期にわたって世界の政治・経済を支配し続けた。この巨大な力を持った「大英帝国」は、なぜ衰退したのか ―― 。本書は、帝国史の全体像を概観しながら、大英帝国の本質とその衰亡の原因について、対外政策や戦略、経済力などの面から解き明かした衰亡史である。

要約

「自由貿易」の呪縛

 大英帝国の偉大さの根源はどこにあったのか?

 1871年、新国家建設の範を求めて欧米視察の旅に出た岩倉具視らは、次のようなイギリスの営みの中に力の源泉を見いだした。

 「英国は商業国なり。(中略)各地の天産物を買い入れて自国に輸送し、鉄炭力を借りてこれを工産物となして、再び各国に輸出し売与ふ」

 だが、こうした認識は当時の日本だけでなく、欧州の主要国や米国も達していた結論で、その実現に向け、各国は独自の戦略を進めていた。この意味では、イギリスは「追いつかれ」つつあった。

 実際、1870年代、イギリスの輸出は大幅に減少した。わずか数年から10年のうちに、ドイツへの輸出は33%減少、米国に対しては28%減少した。また、戦略産業たる綿製品の対米輸出は、70年は265万ポンドだったが、76年には半減した。

 こうした劇的な変化は、イギリスがすでに「追いつかれ」、経済覇権を失いつつあることを示すものだった。産業競争力の見地からみて、1870年代は「終わりの始まり」といえる。

 この「終わりの始まり」を迎えつつあった時、当時のイギリス人が「衰退」をめぐって議論を交わした焦点は「自由貿易」という考え方だった。

 大国が、繁栄の中で自由貿易を採用した後、その競争力に陰りを見いだした時、それまでの自由貿易政策に対してどのように対応するのか —— そのジレンマは極めて深刻なものとなる。

 そこで、「公正貿易」や「相互主義」など様々なレトリックが発明され、自らの保護主義への傾斜が、開放性を高めるための「新路線」であるかのように訴える議論が広まった。

 イギリスに「追いついてくる」国が増加した「大競争の時代」には、自由貿易の変質が迫られることは避けられない。そしてそれは、「帝国主義」論へとつながってゆくのである。

この本の要約を読んだ方は、
他にこんな本にも興味を持たれています。

世界から戦争がなくならない本当の理由

池上 彰 祥伝社(祥伝社新書)

「世界の警察官」をやめたアメリカ 国際秩序は誰が担うのか?

高畑昭男 ウェッジ

危機と人類〔上〕〔下〕

ジャレド・ダイアモンド 日本経済新聞出版社

白人ナショナリズム アメリカを揺るがす「文化的反動」

渡辺 靖 中央公論新社(中公新書)