2001年6月号掲載

大使館なんかいらない

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著者紹介

概要

世界各地にある日本大使館。一般にあまり知られることがない、その実態を、大使館に約9年勤務していた元外務省医務官が詳細にリポートした。新聞やテレビに頼った現地情報の収集、仕事より外務省とのパイプ作りを目的に送られてくる出向者、高額の無税所得や2カ月もの長期休暇…。驚くべき大使館の仕事ぶり、暮らしぶりが明かされる。

要約

大使館とは、どんなところか

 2001年、省庁再編がスタートした直後、外務省は「外交機密費流用事件」によって、どの省庁よりも世間の注目を集めることとなった。

 事件は、外務省の元要人外国訪問支援室長が、5億円を超える機密費を6年間にもわたって自分の口座に振り込み、高級マンションや15頭もの競走馬の購入費に充てていたというものである。

 こんな事件が飛び出してしまう、外務省の得体の知れなさは深まるばかりだ。考えてみれば、外務省は官公庁の中で「国民から最も遠い役所」といえよう。そして、その活動拠点である大使館もまた、国民の目に触れることはほとんどない。いったい大使館とはどんなところなのか?

 私は約9年間、医務官として海外の日本大使館に勤務した。もともと外務省に縁もゆかりもない私から見ると、大使館というところは、かなり非・常識的なところだった。

大使は「閣下」である

 大使館の主である大使は、赴任が決まると天皇から「信任状」を手渡される「認証式」に臨む。庶民が滅多に会えない天皇とサシで会う ―― この儀式が大使を「普通の人」から「時代錯誤の妄想家」へと変身させる。

 そして、大使になると敬称も「様」「殿」でなく、「閣下」と呼ばれるようになる。

 それほど「エライ」人であるため、大使館員は常識では考えられないほど大使にへりくだる。言葉遣い、入室の動作、廊下の歩き方…、あたかも昔の殿様と家来のようである。

 着任する時も、出迎えが大変である。深夜であれ早朝であれ、全館員とその夫人はもちろん、主だった在留日本人の代表までが空港に馳せ参じなければならない。

 そして、「外務省不要論」が以前からささやかれており、各方面から大使館の役割を見直さねばならないという声が上がっている。

 つまり国際社会が複雑化した今日、金融や関税なら財務省、貿易摩擦は経済産業省というように、国内省庁の専門家と協議した上でないと、外務省の対外交渉は成り立たなくなっている。それならば、各省庁が直接交渉した方が手っ取り早いし、日本に有利な交渉ができる、というのである。

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