2026.1.13

編集部:油屋

2026年、株価の行方をどう見るか 「市場サイクル」で投資判断の精度を高める

2026年、株価の行方をどう見るか 「市場サイクル」で投資判断の精度を高める

 「辰巳(たつみ)天井、午(うま)尻下がり」
 株式市場には、古くから干支にまつわる相場格言があります。これによれば、午年である2026年は、株価が下落しやすい年とされています。

 では、過去の午年における、実際の相場はどうだったのでしょうか。
 フジテレビ解説副委員長の智田裕一氏によれば、前回の午年にあたる2014年は、アベノミクスや日銀による大規模緩和を背景に、円安とともに株高が進んだといいます。
 一方で、その前の2回は下落局面となり、2002年はデフレが深刻化する中で前年末比約20%、バブル崩壊直後の1990年は約40%の下落を記録したそうです(「【解説】今年の相場格言は「午尻下がり」午年相場3勝3敗 AIバブルの懸念・日銀に後手リスク・気になる金利動向」/FNNプライムオンライン2026年1月3日)。

 経済や市場は、上がり続けることも、下がり続けることも稀です。そこには必ず一定の「サイクル」が存在します。格言を信じるかどうかは別としても、そのパターンを理解することは、投資判断の精度を高める上で欠かせないでしょう。
 そこで今回は、世界的な投資会社の創業者であるハワード・マークス氏が、市場サイクルの本質と向き合う重要性を説いた本、『市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学』(日本経済新聞出版社 刊)をPick Upします。

「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」

 著者のマークス氏によれば、サイクルの波は、景気や企業業績、投資家心理など、様々な形で表れます。ただし、その根本にある原因や動きのパターンには共通点が多く、時代が変わっても、ある程度一貫している傾向があるといいます。
 そのことを本書では、小説家のマーク・トウェインが語ったとされる、次の言葉を引用しながら、読者にわかりやすく伝えています。

 

「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」

(『市場サイクルを極める』 37ページ)


 マークス氏によれば、この言葉が示すのは、歴史の中でたびたび起こる特定の流れ(例えば、扇動的な政治家の台頭など)では、1つ1つの出来事は異なっていても、根本にあるテーマやメカニズムは一貫している、という点です。
 そしてこれは、金融市場のサイクルや金融危機についても当てはまるといいます。
 例えば2007~08年の世界金融危機は、アメリカで不健全なサブプライムローン(返済能力の低い人への貸し付け)が大量に提供されたことが主な原因でした。しかし、だからといって単に「次に同じような住宅ローンの拡大が起きた時は、より慎重になるべきだ」と考えるだけでは不十分だと、マークス氏は指摘します。
 重要なのは、個別の事象ではなく、背景に潜む普遍的なテーマ ―― 行き過ぎた楽観主義やリスク回避意識の低下、過度に寛容な資本市場の存在など ―― に目を向けることだといいます。つまり、重要なのは細部ではなく、繰り返されやすい「テーマ」だということです。
 こうした傾向を理解し、再び同じ兆しが現れた時に気づけるかどうかが、市場サイクルに着目する上で極めて重要なポイントだといえるでしょう。

立ち位置を見極めるカギ

 では、市場が今、サイクルのどこに位置しているのかを見極めるには、どうすればよいのでしょうか。
 マークス氏によれば、価格が適正水準から大きく乖離して上昇している局面では、次のような重要な要素がいくつか組み合わさって現れることが多いといいます。

 

  • ・概して良好なニュース
  • ・ファンダメンタルズに関する満足感
  • ・足並みのそろった華々しいメディアの報道
  • ・楽観的な話を無条件で受け入れる姿勢(中略)
  • ・全般的に明るいムード

(『市場サイクルを極める』 280ページ)


 例えば、2025年に日経平均株価は35年ぶりに史上最高値を更新し、一時5万2411円をつけました。こうした局面では、その勢いのまま2026年も上昇が続くと考えがちです。しかし、楽観的な話ばかりがあふれたり、普段は投資をしない人までが投資の話をし始めたりするようであれば、価格がすでに適正水準から大きく離れているのではないかと疑ってみる余地があるでしょう。
 一方で、価格が適正水準から離れて割安の水準まで急落している時には、次の要素がいくつか組み合わさっていることが多いと、マークス氏は指摘しています。

 

  • ・概して思わしくないニュース
  • ・ファンダメンタルズに関して高まる警戒感
  • ・きわめて否定的なメディアの報道
  • ・悲観的な話をすべて受け入れる姿勢(中略)
  • ・全般的に沈滞したムード

(『市場サイクルを極める』 281ページ)

 
 これは先の例とは対照的に、「株価の下落が止まらない」「上がってもすぐに元に戻る」といった情報があふれ、市場心理が冷え切っている局面だといえるでしょう。
 そして、冷え込んだ心理とバリュエーション(PERなど)の低下によって投資家がパニックに陥り、価格が全般的に低下している時にこそ、買うこと(投資すること)が重要だとマークス氏はいいます。そうすることで、最大限の利益が得られるからです。

 2026年を迎え、iDeCoやNISAを通じて投資を始めたり、ポートフォリオを見直したりしようとしている方も多いのではないでしょうか。そんな時に重要なのは、「今は買い時か、慎重になる局面か」を冷静に考える視点です。『市場サイクルを極める』は、そうした視点に磨きをかけるための良い指針を与えてくれる1冊です。
 また、市場サイクル以外に、投資を成功させるために押さえておくべきポイントを知りたい方には、マークス氏の名著『投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識』(日本経済新聞出版社 刊)もおすすめです。こちらの本の要約も「TOPPOINTライブラリー」に収録していますので、ぜひ併せてご覧ください。

(編集部・油屋)

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 「編集部員が選ぶ今週のPick Up本」は、日々多くのビジネス書を読み込み、その内容を要約している編集部員が、これまでに『TOPPOINT』に掲載した本の中から「いま改めてお薦めしたい本」「再読したい名著」をPick Upし、独自の視点から読みどころを紹介するコーナーです。この記事にご興味を持たれた方は、ぜひその本をご購入のうえ通読されることをお薦めします。きっと、あなたにとって“一読の価値ある本”となることでしょう。このコーナーが、読者の皆さまと良書との出合いのきっかけとなれば幸いです。

2019年2月号掲載

市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学

ウォーレン・バフェットも一目置くという、世界的な投資家ハワード・マークス。氏の手に成るロングセラー、『投資で一番大切な20の教え』で論じられた要素のうち、最も重要な「市場サイクル」にスポットを当てた書である。サイクルの重要性、性質、種類、対処の仕方等々、“勝率を高める王道の投資哲学”が披露される。

著 者:ハワード・マークス 出版社:日本経済新聞出版社 発行日:2018年10月
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