2026年8月号掲載
AI大格差 最先端の研究が明かす仕事と給料の未来
著者紹介
概要
今や、生活と仕事を大きく変えるAI。その技術進歩は、これまでの技術革新に比べ、桁違いに速い。チャットGPTの登場をはじめ、近年のAI革命はどんな未来をもたらすのか。仕事はどうなるのか? 経済を豊かにするのか? 格差を広げるのか? G7(主要7カ国)の専門家パネルに参加した経済学者が、AIと雇用の未来を見通す。
要約
AIを知る
AIは、仕事の中身と給料の決まり方を変える。その変化は平等には訪れない。ここで生まれるのが、「AI大格差」である。
AI大格差の正体は、次の3点。
①仕事の中身が変わる。②AIの出力を見抜き、責任を持って意思決定に落とし込めるかどうかで決定的な差がつく。③その変化に合わせて学び直し、職を移れるかどうかで差が開く。
この3つが重なる時、格差は広がりやすい。
自動化の系譜
今、私たちはAIが文章をつくり、コードを書く時代を生きている。こうしたAIの衝撃は、技術史の中で見れば「最新章」にあたるものだ。
18世紀後半の英国で始まった「第1次産業革命」は人間の手作業に頼っていた生産を機械の力、蒸気機関に置き換えるという自動化だった。
19世紀後半から20世紀初頭にかけて「第2次産業革命」を迎えた。この時代の革新を支えたのは電力と石油である。「第3次産業革命」は、1970年代初頭から始まった。半導体が計算や制御の役割を担い、私たちの暮らしを変えていった。
そして現在進行しているのが「第4次産業革命」である。2016年の世界経済フォーラムで、会議を主宰するクラウス・シュワブ博士が「第4次産業革命」という概念を世界に向けて提唱した。彼は、この革命は「『人間とは何か』という根源的な問いにさえ影響を与えるだろう」と述べた。
これまでと何が違うのか?
これまでの産業革命と第4次産業革命の違いは、いくつかある。第1に、技術の普及スピードが格段に速くなったこと。例えば蒸気機関の普及には100年以上を要したが、インターネットやスマホの普及には10~15年、そして生成AIはわずか1年で数億人に利用されるまでになった。
第2に、影響が「知的労働」に及び始めていることである。これまでの産業革命では主にブルーカラーの仕事が置き換えられてきたが、今回はホワイトカラーが影響を受けている。
第3に、「人間とは何か?」という根本的な問いを突きつけている点である。AIが言葉を理解し、創作まで行うようになれば、私たちは「人間らしさ」とは何かを問い直さざるを得ない。