2026年6月号掲載
「エプスタイン文書」解読
- 著者
- 出版社
- 発行日2026年4月15日
- 定価1,870円
- ページ数207ページ
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著者紹介
概要
2019年に公開された「エプスタイン文書」。その中の裁判記録などから明らかとなった、米国の富豪ジェフリー・エプスタインの犯行の手口や交友関係は、世界に大きな衝撃を与えた。彼はいかにして未成年者の性的人身売買を行ったのか? イスラエルとの知られざる関係とは? 日本ではあまり報じられない、その深層に迫る。
要約
ジェフリー・エプスタイン
2019年8月10日、メトロポリタン刑務所の看守は、房内で死亡しているジェフリー・エプスタインを発見した。死因は「首つりによる自殺」。その知らせは瞬く間に世界を駆け巡った ―― 。
エプスタインの半生
ジェフリー・エドワード・エプスタインは、1953年、ニューヨーク・ブルックリンで生まれた。高校を卒業後、ニューヨーク大学に進学したが学位を取得することなく去っている。
1970年代半ば、彼はマンハッタンの名門私立校で数学と物理を教える職を得た。その後、彼は金融の世界へと足を踏み入れる。1976~81年、当時投資銀行の大手であったベアー・スターンズに勤務した後、独立し、自らを「億万長者のための資産管理人」と称するようになる。
1990年代に入る頃には、彼は莫大な富を手にしていた。マンハッタンに市内最大級の私邸を所有。さらにフロリダ州パームビーチ、パリ、米領ヴァージン諸島の私有島などにも不動産を所有するようになる。
2人の主要顧客・ウェクスナーとブラック
2019年、彼が亡くなった時点での資産総額は5億7800万ドルにのぼったと報告されている。しかし、その財産がどのように築かれたのかは大きな謎である。彼は裕福な友人たちが未成年者に関わる性犯罪を行う様子を自宅や私有島で密かに録画し、その映像で脅迫していた可能性があるという衝撃的な見方もある。
一方、『フォーブス』誌の調査によれば、エプスタインの富の礎は2人の億万長者の顧客に大きく依存していたという。その2人とは米国の小売り帝国・Lブランズ創業者レスリー・ウェクスナーと、プライベート・エクイティ界の重鎮、レオン・ブラックである。
慈善活動を通じた「評判」の獲得
エプスタインが財産の次に築き上げたのは、慈善活動を通じた影響力である。
米国では、名門大学や研究機関の多くが民間からの寄付に大きく依存している。多額の寄付を行った個人は、理事や諮問委員会のメンバーとなることも珍しくない。エプスタインも科学研究プログラムに資金を提供し、著名な学者たちとの関係を築いた。そこに生まれるのは、単なる人脈以上のもの ――「評判」である。
信頼と権威を持つ機関と自らを結び付けることで、エプスタインは「科学と思想の洗練された後援者」というイメージを強化した。エリート文化において、こうした評判はしばしば盾として働き、我が身を守ることがある。
米国のエリート社会は分野横断的に高度にネットワーク化されている。政治、学術、金融、メディアが、私的な関係を通じて緊密に結びついている。米国ではそうした私的機関と社交ネットワークが、権力の回路を形づくることが多い。
エプスタインは、1990年代後半までに自らの「正当性」を示すものをほぼすべて手にしていた。巨額の資産、名門との結びつき、慈善活動、エリート社交圏への出入り。米国では、こうした要素は“信頼できる人物”という前提を生み出す。そして、評判は資本のように複利で膨らんでいく。