2026年6月号掲載
トレード・オン思考 トレード・オフを乗り越える「第3の道」
著者紹介
概要
ビジネスの世界は、“トレード・オフ”(二律背反)の塊だ。コストと品質、セキュリティと利便性…。企業が頭を悩ませる「あちらを立てればこちらが立たず」の問題は、どうすれば解決できるのか? 多様な企業事例からその答えを探る。大切なのは「どちらかを選択する」でも「バランスを取る」でもない、第3の発想だ!
要約
トレード・オフの解決は難しい
我々は、様々な「トレード・オフ」(二律背反)の中で生活している。
例えば、ECサイトで商品購入時に二段階認証を求められることがある。手間もかかり面倒だが、これをなくすとセキュリティレベルが落ちる。企業活動においては、企業は品質とコストを何とか両立させようと頑張ってきた。
このように、ビジネスの世界はトレード・オフの塊である。それを「トレード・オン」(トレード・オフを解消した状態)にできれば、顧客満足を高め、企業の利益も高めることができる。
バランスと選択の難しさ
これまで企業では、トレード・オフをトレード・オンにするために、「バランスを取るか」、いずれかを「選択するか」という方法が採られてきた。
だが実際に、バランスを取る経営を行うことは容易ではない。その典型例が大塚家具だ。
同社は、大塚勝久氏が1969年に創業した家具販売会社である。販売方法としては会員制を採り、比較的高額の家具を顧客にアテンドしながら販売する方法で、大きく成長してきた。
しかし長女の大塚久美子氏は、このやり方は時流に合っていないと考えた。より手の届きやすい製品に幅を広げ、入店しやすいように会員制を止め、アテンド型の接客も廃止した。
だが同じ時期、ニトリやIKEAというローコスト・オペレーションに優れる競合企業が急成長を遂げていた。結果、大塚家具の中価格帯への進出は消費者には中途半端なものと映り、一方で昔からの大塚の固定客は離れていった。
久美子氏としては、従来顧客の維持と、成長している中間層の取り込みのバランス経営を目指したが、消費者にその意図は上手く伝わらなかった。
今の時代、このような以前から行われてきたトレード・オフの解決方法を繰り返していても、大きく飛躍するブレークスルーは起こせない。この閉塞状況を打破するためには、トレード・オンを志向する新たな発想が求められる。