2026年3月号掲載
ザ・パワー・オブ・キャッシュ デジタル経済にこそ跳ね上がる現金の価値
Original Title :The Power of Cash:Why Using Paper Money is Good for You and Society (2025年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日2025年12月23日
- 定価2,750円
- ページ数454ページ
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著者紹介
概要
近年、QRコード決済や個人間送金アプリが広まり、現金離れが進む。だが、現金には、電子決済にはない価値がある! 災害時に役立つのは手元の現金だし、プライバシーを脅かすこともない。そして、こうした利点は、皆が現金を使わなくなれば失われ、取り戻せない。巷で進むキャッシュレス化の流れに待ったをかける1冊だ。
要約
現金は消滅するのか
30年前は、ほとんどの人が現金を使っていた。今では、世界中で現金から、クレジットカードやQRコード決済、個人間送金アプリ、暗号資産など様々な電子決済へと軸足を移している。
この動きを歓迎する声は多いが、見過ごされてきた負の側面もある ―― 。
世界の現金使用状況
現金が使われる理由としては、主に「消費」(支払い)と「貯蓄」の2つが挙げられる。米国で実施されたある全国調査では、決済時の現金離れが著しいと指摘されている。
2015年の調査では、「現金は一切持ち歩かない」との回答が全体の5分の1(17.1%)を占めた。それが2022年には、全体の3分の1(34.6%)を超えた。つまり、10年足らずで現金を持ち歩かない人の割合が倍増したのである。
誰もが現金使用を減らしていれば、社会全体で保有される現金量も減少して当然と考えるだろう。
ところが、まったく逆なのだ。米国では、第1次大戦末期以降、インフレ調整済みの1人当たり現金保有額が年を追うごとに劇的に上昇している。1900年代初頭に1000ドルに届かない水準だったのが、現在では約7000ドルに跳ね上がっている。
決済時の現金離れの一方で、貯蓄や、いざという時の備えに現金を保有している人は多いのだ。
「決済から貯蓄へ」の変化の問題点
このように現金の用途が決済から貯蓄へと変化しているが、これが大きな問題に発展する。
あらゆる事業者がキャッシュレス決済に完全に移行したら、現金取引を処理できなくなる。タンス預金を引っ張り出して買い物に行っても、店側は現金を受け入れる設備や準備を失っているのだ。
キャッシュレス社会に突入したら、現金を引き出す必要があっても、銀行から顧客に現金を供給する方法がない。顧客から現金を受け取ることもできない。つまり、現金を市中から回収する体制がなくなり、何らかの事情で電子決済が麻痺する事態になれば、経済活動は行き詰まりかねない。